キャリアガイダンスVol.423
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 もっとも、導入したポートフォリオには、活用面ではまだ課題もある。 「これだけの記録を、大学入試にはどう活用するか。そこはまだ見えていない部分が多いです」(早川先生) この点は、まさに山梨高大接続研究会でも課題になっているという。 「ポートフォリオというのは蓄積して終わりではないのです。その成長の過程を自身で俯瞰したり、他の人にも伝えたいなら、『加工・再構成』するスキルも必要になります。蓄積したポートフォリオをもとに、調査書や活動報告書を作成するといったように」(藤准教授) ところが、入試のための調査書ひとつとっても、いろいろな意見があってまだ不確定な要素が多いのだ。 「例えば高校の先生方には『大学は全員の調査書を本当に見る時間がありますか?』という懸念があり、大学側には『調査書に書かれていることは本当ですか?』という不安があるのです。こうした問題はどうすれば乗り越えられるのか。漠然とした話になりますが、私はやはり、高校と大学が今以上に連携し、信頼関係を深める以外ないと思っています」(藤准教授) こういった背景をもとに、山梨高大接続研究会は2018年度より、YAMANASHI-WAYと名付けた高大による研究実践にも乗り出した。研究校の高校生数十名が、山梨大学で年2〜3回のプログラムを継続して受講。各プログラムごとにポートフォリオを使って振り返りを実施、考えたことや成長の記録が残るようにし、さらに一つひとつの体験を点と点を結んで線にするようにつなげていくことで、進みたい道を自分で描けるようにする構想だ(図3参照)。 「高校生が自身の成長を記録する『ポートフォリオ評価』に取り組み、そこを起点に大学や実社会でやりたいことまで思い描く『キャリア・パスポート』に発展させていく、というイメージですね。そしてその活動を見守るなかで、我々もポートフォリオや高大接続の在り方について学びを深めていきましょう、と呼びかけています」(藤准教授) そのように将来まで見すえてポートフォリオを作成していくことは、甲府南高校でも目指していることだ。 「本校のポートフォリオが入試にどう役立つかはまだ見えませんが、こうした記録を残していくことには迷いはありません。生徒が自分のことを考えていけるよう、手元にあるべきだと思いますから」(早川先生) 「課題研究やいろいろな活動が、記録を残すことで今以上に『次につながる』ものになってほしいんですよね。この活動でこんなことを感じたからあの分野に進みたくなった、途中で進む道が変わったけれど、それは記録を見返すなかで、意外なところに本当に自分のやりたいことがあると気付いたからだった、とか。失敗も失敗のままに終わらせず、全部財産にしてほしい。生徒にはそんな心づもりで、ポートフォリオを作成してほしいと思っています」(小林先生)図3 YAMANASHI-WAYの構想2004年度の課題研究の実験ノート。グループを組んだ生徒たちで協力して1冊の活動記録をまとめていた。2018年度1年生向けのポートフォリオ。それぞれの生徒が自分のファイルに課題研究や各種活動を記録。入試だけの高大接続ではなく継続育成のプログラム開発も成果、気づき、失敗…すべての記録が次への財産に大学で実施する各プログラム展開例継続育成型プログラムの実施による資質・能力に関する理解と方法の協力開発、実践、育成※大学が地元の高校生に年2~3回継続的なプログラムを展開、生徒のキャリア支援や、地元の人材育成につなげる高校1年生高校2年生高校3年生大学生大学の知基礎講座大学の授業大学入学者選抜学んだことを学部・大学選択や自己評価に活用芽生えた興味関心をもとに基礎講座を選択講義演習ポートフォリオ作成教師への基礎講座(教育学部担当)エンジニアへの基礎講座(工学部担当)医師・看護師への基礎講座(医学部担当)共生科学への基礎講座(生命環境学部担当)1講義ワークショップポートフォリオ作成2実習演習ポートフォリオ作成3・研究・異文化理解・環境エネルギー・生命・医療・生き方これまでに育んできた課題意識や芽生えた将来の夢を踏まえて大学でさらに学ぶ202018 JUL. Vol.423

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