キャリアガイダンスVol.423
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「教員は経験を重んじる傾向があるため、過去の生徒に対する指導経験と照らし合わせて、『君はこういうタイプだからこうしろ』という指示になりがちです。しかし、それは生徒が主体的に出した答えではありません。生徒が自ら自分のキャリアを考えられるように働きかけなければいけない、これこそがキャリア教育だと気付かされました」(小橋川哲先生) そこで、キャリア・カウンセリングのスキルを会得し共有するために、追手門学院大学の三川教授による、全教職員対象の研修を行うこととした。高校現場でのキャリア・カウンセリングの必要性と、キャリア・カウンセリングを実施する際に生徒との対話で気をつけたい態度や言葉かけなど、より実践的な内容に踏み込んだ研修となった。 三川教授から伝えられた生徒とのコミュニケーションのポイントは、生徒の話を「聴く」ことと、「受け止める」ことだ(詳細は34ページ参照)。つまり、生徒が自ら考えられる力を付けるには、教員が多くを語るのではなく、まずは生徒が語りたくなるような声かけをし、生徒が語り始めたら話をよく聴き、教員の意志ではなく本人が客観的に自分を見られるように対話を進めていくことだ。 教員はよかれと思って、生徒に解決策を提示してしまうことがあるが、それは「指示」であって「指導」ではないと先生たちは気付いたという。 「そのことに気付いてから、生徒への声かけの仕方が変わっていきました。本人が自分で課題に気付くことで、やるべきことが見えてきて、ポジティブに将来のことを考えられるように導くことです。こうしたコミュニケーションのスキルを身に付けることが、教員としてあらゆる場面で生徒と接する際の糧になると思いました」(手登根先生) 「三川先生の研修を受けて、自分自身ができていることと、できていないことを整理することができました。今までも生徒と頻繁に話してきましたが、日常の会話がキャリア教育に結びつくとは意識していませんでした。どんな対話でも生徒の自己理解を深めることに結びつくと意識するだけで、変わってくると実感しています」(小橋川先生) このようにして、北谷高校のすべての教職員が、生徒との対話でキャリア・カウンセリングを意識するようになってきた。その対話の例が上の図2から図5だ。実際に先生たちがどんな声かけをして、その結果がどうだったかを、手登根先生が現場の先生たちにインタビューをしてまとめた一部を紹介している。対話はあらゆる学校活動の中で行われるため、「教科指導」「生徒指導」「部活指生徒に「指示」するのではなく自ら気付くように「導く」実施した取り組みを事例化し全教員で振り返り、改善する今度の小テストはできたね?勉強はどれくらいやったの?あんまり勉強できてないねーどんな勉強してるの?算数でつまずいているねあなたのペースでやったらいいんだよ数学とか英語ばっかりやってるさー。復習ができてないんじゃない?どこかがわからないの?わからなかった△△くらいはい□□とか○○がわからない計算が他人より遅いです…授業のペースについていけず、放課後の補習の場面での会話。特進クラスで成績はよいが理数系が苦手な生徒。勉強量や勉強方法を引き出し、どこでつまずいているかを本人が気付けるような対話ができた。放課後、教室に残っている生徒に満遍なく話しかけている会話の一コマ。いつもひとりでいる生徒や、いじられていそうな生徒は気に留めて声をかけるようにしている。何気ない会話から生徒の気持ちを引き出し、進路の話にふれて、状況を聞き出すことができた。実際の対話で教員の声かけによる効果があった事例図2図3部活どんな感じ?楽しい?楽しいようん、楽しいクラスだったら○○と仲良くしてるよーまだ親に反対されてますうん、また話してみるクラスは楽しい?誰と友達してるの?進路はどんな感じ?そっかぁ。でも保護者とのお話も大事だもんねはーい、何かあったら言ってね先生先生生徒生徒教科指導生徒指導302018 JUL. Vol.423

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