キャリアガイダンスVol.423
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提で生徒が自分の気づきを書くものなので、生徒とのコミュニケーションが深まるきっかけになります。ここで見てあげるべきポイントは、生徒が自分の成長を感じているかどうかです。 キャリア・カウンセリングもキャリア・パスポートも、生徒が自分の気づきや学びを言語化するものです。キャリア・カウンセリングによって生徒の自己評価力が高まり、その力でキャリア・パスポートに自分の成長を記録し、積み上げていくことでさらに教員とのコミュニケーションが深まっていく、相乗効果が期待できると思います。ンには気を付けたいポイントがあります(左上図参照)。 生徒の話を「聴く」際に気を付けたいのが態度です。「無視」や「先送り」などは故意でなくやってしまっているケースが多々あります。私自身も学生が挨拶してくれているのに気付かず通り過ぎてしまったり、「忙しそうにしているので声がかけにくかった」と言われたことがありました。また、実際に忙しいときに声をかけられて「ちょっと待ってて」と言って、つい忘れてしまうこともあります。こうしたことを生徒は覚えているものです。 また、「受け止める」際に気を付けたいのが言葉で、上図の例のように普段何気なく使っている言葉もあると思います。使う場面に注意が必要で、生徒の気持ちに寄り添っているか、その言葉をかけたことで、生徒が自己理解を深めたり、前向きな意思決定ができるかどうかです。 生徒や先生の中には、話すことが苦手な人もいます。また、一人の教員が多数の生徒を担当していて、毎日全体まで目が行き届かないこともあるかもしれません。そうしたときに、授業でのリフレクションシートや、「キャリア・パスポート」が役に立つと思います。授業中に声かけができなかった生徒でも、リフレクションシートで様子を知ることができ、「ちゃんと見ている」「認めている」ことが伝わるフィードバックをしてあげればいいのです。「キャリア・パスポート」は先生が読む前…」と、さらに不安な気持ちを伝えてくるかもしれません。逆に、「今頃になって何を言っているの」と返してしまうと、「自分なりにがんばってきた」生徒は「だって…」と言い訳したくなるかもしれません。 生徒にかけた言葉に対して、生徒が黙ってしまったり、「けど」「でも」「だって」など反論や言い訳の言葉が出てきたら、コミュニケーションにズレが生じているサインです。会話がかみ合っていないので、発展的な展開が望めません。 このように生徒とのコミュニケーショグ的な対話との違いは、「生徒の成長を目的とした意図をもった対話」であるかどうかです。キャリア教育における生徒の成長とは、生徒が自ら気付き、主体的に自分の将来を考える力を身に付けることです。「この生徒のこんなところを伸ばしてあげたい」「こんなことに気付かせてあげたい」と先生が意識して声かけしていれば、それは既にキャリア・カウンセリングになっています。 こうした観点から、28ページの「試験に合格できるでしょうか?」の会話を考えると、どうでしょうか? 試験直前に不安になっている生徒に対し、励まそうと思って安易に「大丈夫!」とか「何とかなるよ」と声をかけても「でも言語化されたものから生徒の成長を読み取る● コミュニケーションのポイント● 気を付けたい言葉の例【気を付けたい言葉】安易な保証、気休め、気持ちの否定、心配の先取り・先送り、泣き面に蜂、的外れ、追い込み、正しすぎる意見、など受け止める【気を付けたい態度】無視、無理解、無関心、聞き流し、先送り、時期はずれ、あきらめ、など聴く生徒の自己評価力を高める教員の対話的な関わりとは?「キャリア・カウンセリング」とは? 三川俊樹(追手門学院大学 教授)

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