キャリアガイダンスVol.423
46/66

 今回取り上げるのは、特別支援学校高等部である京都市立白河総合支援学校のキャリア教育だ。対象となるのは主に軽度の知的障がいのある生徒であり、カリキュラムも高校とは異なるが、人材育成の視点は決して特別なものではない。「自立した社会人の育成を目指す学校」の汎用的なキャリア教育の事例として紹介したい。 2004年、京都市は従来の障がい種別による市立養護学校を、一人ひとりのニーズに合わせた教育を行う「総合養護学校」(07年度より「総合支援学校」)に再編。同時に、企業就労を目指す高等部職業科を2校に設置した。そのうちの1校が白河総合支援学校だ。学校教育目標「自ら働く力を高め、働くことを通して社会に貢献し、自らの未来を切り拓く人を育む」について、柴垣 登校長はこう語る。 「本校の教育の根っこにあるキーワードは『自ら』です。困難にぶち当たったとき、人から言われてやっているなら折れてしまうことも、自分で決めたことなら踏ん張れます。社会で人と関わりながら自分自身の思いを実現する生活を送るための力を、本校の3年間で養ってほしいと考えています」 同校のプロフィールを見ると、就職率の高さが目を引く。近年、特別支援学校高等部卒業生の就職率の全国平均は30自ら考え行動する生徒を育成し高い就職率を維持「働く」を体験的に学ぶ「デュアルシステム」を導入%前後で推移しているが、同校では職業学科一期生で就職率100%を達成し、現在まで希望者のほとんどが就職を果たしている。 ただし、注目したいのは就職率そのものではなく、この数値の背景にある実践だ。職業学科立ち上げ以来、「学校の中で完結しない教育」を掲げ、企業や地域との新たな関係を切り拓き、生徒の働く意欲や自己肯定感を育んできた。そんな十数年間の軌跡をたどってみたい。 同校は04年の職業学科(産業総合科)開設にあたって、長期の企業実習を教育課程の中心に据えた独自の「デュアルシステム」を導入した。企業実習は従来から実施していたが、「デュアルシステム」ではその量を大幅に拡大。3年間で約30週間、1人あたり10社以上、本人の希望や課題に応じた企業実習を行い、「働く」とはどういうことかを体験的に学べるものとした。職業学科の立ち上げから10年間、同校校長を務めた森脇 勤先生(京都市教育委員会参与)はこう語る。 「企業実習を通じて、生徒一人ひとりについて学校でどんな力を育てる必要があるかを明らかにし、そして身に付けた力が社会で役に立つのか検証することを繰り返すことで、効果的に学べるのではないかと考えました」 同校は「デュアルシステム」の仕組みの導入とともに、就職率100%を目標に長期間の企業実習や地域協働活動など、学校内で完結しない教育の仕組みを作り、生徒一人ひとりの歩みの違いに合わせて実践してきた京都市立白河総合支援学校。社会で力強く生きていくための自己肯定感、主体性、課題解決力、職業意識を育んでいます。取材・文/藤崎雅子先進校に学ぶキャリア教育の実践特別支援教育 デュアルシステム 自己肯定感 地域連携 学校間連携白河総合支援学校(京都・市立)デュアルシステムや地域協働活動を通し 各自の歩調で自分軸をもつ社会人へ462018 JUL. Vol.423

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る