キャリアガイダンスVol.423
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 堺工科高校定時制課程の有志生徒が小学生の職業体験をサポートする「ゆめ・チャレ」は、2013年にスタートした。「パンを作ろう」「消防士体験」「おいしいコーヒーを入れよう」「注染手ぬぐいを作ろう」など、楽しそうなメニューが並び、6回目に当たる今年2月には32事業所、275人の小学生が参加する一大行事になっている。モデルにしたのは「キッザニア」。2時間から半日程度と短いながら、職業に合わせた子ども用ユニフォームを用意し、体験後には「給料」として地元商店街で使える疑似通貨「100ユーメ」8枚が手渡される。高校生の役割は、受付や各店舗への案内、そして各事業所で大人と一緒に小学生に仕事を教えることだ。 「1年生の時に保田先生にやってみないか、って声をかけられたんです」と生徒側のプロジェクトリーダーを務める松下伊織さん(3年次)は言う。「定時制高校にいい印象をもっていない人もいると思うんですけど、部活やボランティアを熱心にやっている生徒も多いんです。なにより、僕は高校に入ったらいろんなことにチャレンジしたいと思っていたので『ゆめ・チャレ』も興味があって。やってみたら、めっちゃ良かった!」 教える側に立つ体験は初めてだったが、大人の言葉を噛み砕いて伝え、わかってもらえた瞬間や、戸惑う小学生を支え、「できた!」と笑顔を見せてくれたときの喜びはそれまでにないものだったそう。2度目の昨年は小学生への接し方が上手になった。「仕事体験」ではなく「仕事」として関わったことで自分自身も成長した実感があると言う。加えて、スタッフにと誘った友達が仕事への意欲をもち、アルバイトを始めたのも嬉しかったことのひとつだ。 プロジェクトは約半年かけて準備をする。毎年6月ごろから地元の企業やお店に協力を依頼し、話し合いながら小学生の体験内容を決めていく。その間、7、8月には高校生が1〜2時間の仕事体験をし、内容の理解と小学生に対するサポートについて打ち合わせを行う。10月ごろに教員が各事業所との調整を終え、11月から参加希望者の応募を待つという流れだ。 教員主導で始めたプロジェクトだが、徐々に生徒の関わり度合いが大きくなっており、松下さんは「これまで協力してもらっていた山之口商店街だけでなく、駅の東側の商店街にも声をかけて、もっと多くの小学生が参加できるようにしたい。それから、この取り組みを堺だけでなく、大阪、近畿、日本全国に広げたい」と意欲を語る。 図1のように、10事業所、68人の参加者で始めた「ゆめ・チャレ」は年々応募倍率も上がっている。希望に応えようと規模を拡大してきたが、これだけの数を調整することは「正直、ものすごく大変です」と保田光徳先生は言う。「うちの先生たちの前向きな協力体制がなければできません」と言うように、小学生に渡す「給料」の協賛金集めから名前入り給料袋の作成、応募受付、名簿管理などたくさんの仕事がある。それでも、転勤した先生や卒業生が手伝いに来てくれるのは、小学生と高校生の成長に立ち会える喜びがあるからだろう。 かつて定時制高校は勤労青年の学びの場であったが、そのあり方は徐々に変わってきた。基本的生活習慣や1940年創立/定時制・総合学科/生徒数152名(男子132名・女子20名)/進路状況(2017年度)進学予定7人、就職42人(就職希望者42人中)、その他2人。キャリア教育連携表彰優秀賞(2016年度)、時事通信社第32回教育奨励賞優秀賞(2017年)、第66回読売教育賞最優秀賞(2017年)受賞スタッフ側に立つことで成長を実感目指すのは自己有用感を育てること本当に「働く」経験になるインターンシップのあり方は何か? アルバイトをしながら通う生徒も多い定時制課程で考えたのは、地元地域で小学生が働く体験を高校生がサポートする「ゆめ・チャレ」プロジェクト。スタッフとして活躍する高校生と先生にお話を聞きました。小学生の職業体験サポートやものづくりによる社会貢献で自己有用感を育てる取材・文/江森真矢子堺工科高校 定時制課程(大阪・府立)第17回522018 JUL. Vol.423

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