キャリアガイダンスVol.423
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わして違いを認識し、そこをすり合わせていってこそ、よりよい音楽を表現できると思うので。そうしたコミュニケーションが求められるのは、音楽だけに限らないですよね。社会に出れば、職場や地域にあんな人もこんな人もいるなかで、お互いを尊重し、どう力を合わせるか話し合わなければいけませんから」 違いを認め合うことは、石井先生が勤める茅ケ崎高校でも大事にしているテーマだ。同校は2016年度に、神奈川県の「インクルーシブ教育実践推進校」に。翌2017年度より、一般入試のほか、地域の連携中学校に在籍する知的障がいのある生徒の入学者選抜を開始、その選抜で入学した生徒が1クラスに3名程度は在籍するなかで、みんなで学び合う体制をスタートさせた。目指しているのは、障がいのあるなしにかかわらず、一人ひとりが自分を出すことを怖がらず、お互いに認め合いながら学んでいく学校だ。 とすれば、どんな授業にすればいいか。 石井先生は「音楽をなるべくみんなで楽しむ」ことをベースにしたいという。 「生徒にもよく言うんです。うまく歌うことや、楽器を上手に演奏することが、私の授業のゴールではないよと。それ以上に、いろいろな音楽の楽しさを知って、一生音楽と付き合えるようになってほしい。学習指導要領でいうところの『音楽を愛好する心情を育む』ですね。そして音楽を楽しいと思うからこそ、おのおのが発信もしたくなって、お互いの違いに気付き、認め合っていく面白さも味わってほしいのです」生徒を見取って授業をデザイン豊かな人生を送るには、自分らしく力を発揮していくことに加え、生活を楽しんでいくことも大事なように思います。そうした生きるうえでの総合的な力を、音楽とのふれあいを通して育もうとされている実践をご紹介します。取材・文/松井大助撮影/西山俊哉 「音楽には答えがない」と石井先生は思っている。楽譜どおりに歌唱や演奏をする部分もあるが、音の強弱やリズムなどを自由に考えられる部分もたくさんある。その音楽をどう受け取るかも、個々の自由だ。 「悲しいときに聴きたい曲がみんな一緒かといえば、そうじゃないですよね」 ところが、音楽は、答えがなく自由だからこそ、生徒はそれをどう感じ、どう表現したいか、表に出すのを怖がるという。 「授業で新しい曲を歌うのをすごく怖がるんです。これで合っているかな、って」 こんなふうに表現したらどうかと思っても内に秘めたままで、自分の意思を言葉にするのが苦手。LINEでスタンプを駆使し、曖昧さを残してやり取りするのは得意だが、対面で「私はこう思う」と言い合うことには慣れていない。 「みんなと同じでいないと不安になるんです。私も高校生のときはそんな面があったかなあ、と思うのですが、もっと自分を出せるようになってほしい。『こうしたい』『私はこう思う』と言葉のキャッチボールをするなかで、お互いの考えや感性の違いに気付けたら素敵ですし、そのうえで自分と相手の違いを認め合ってくれるといいな、と。歌唱や演奏でも、意見を交茅ケ崎高校(神奈川・県立)自分を出すことを怖がらず違いを認め合えるように吹奏楽指導者コースのある音楽大学を卒業後、神奈川県の2校の高校で非常勤講師として2年間勤務。正規採用となってからは、特別支援学校での4年間の勤務を経て、現在の茅ケ崎高校に。音楽の授業を担当するほか、吹奏楽部と合唱部の顧問も務めている。音楽科石井 舞先生生徒に対する想い542018 JUL. Vol.423

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