キャリアガイダンスVol.424
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者とも共有しようと努めている。 堂脇先生は、プロジェクト1年目のときに学校から佐伯市役所に約200日通い、関係を築いてきた。また、ツテを頼りに地元の企業や識者、東京の企業にも探究活動への協力を仰いできた。つまり外部との連携にも尽力してきたわけだが、その協力相手から「自分は何をすればいいのか」と問われると、「そこから生徒と一緒に考えてもらえませんか」とお願いしているというのだ。 「その対応を批判されることもありますが、私たち大人が事前にストーリーを描いたら、探究ではなくなってしまいます。何が起きるか誰もわからないなかで活動してこそ、すごいドラマが生まれるんですよ。これまでの経験では、探究が進むにつれて協力してくださった動における先生たちのそうした姿勢をバックアップしていきたいという。 「先生方のなかには、自分の守備範囲を越える探究をする生徒がいると『いいんだろうか?』と不安になる方がいるかもしれないので、『いいんだよ』と伝えていきたいです。先生の専門性だけでは教えられないことがあっていい。むしろ教えて終わったら探究にならないので『教えてはいけない』。その生徒は何を知りたいのか、どうすればそこに迫れるのか、自身で掘っていけるように寄り添うのが先生の役割だと思うのです」 教えられないことがあっていい、というスタンスを、堂脇先生は外部の協力方も『良かった』と言ってくださいます」(堂脇先生) 例えばある生徒は、地元産の赤じそを使ったジュレの商品開発に挑むも、何度やっても固まらず、お祭りへの出品に黄信号が灯って号泣した。しかし協力者のシェフも固唾を呑んで見守るなか、ついには試作品を完成させ、喜び、自信も深めた。 「独創的な探究をすると、時には失敗もします。でもその失敗を次に役立てていけばいいんだ、ということをぜひ学んでほしいです」(後藤先生) SHAプロジェクトについては、「最初はやらされ感があった」と本音を漏らす生徒もいるという。けれども、誰もゴールを知らないことに取り組むうちに次第に研究テーマが自分のものになっていき、最終的には多くの生徒が「やって良かった」という感想を残すそうだ。 活動を通して、自分で道を切り拓く力が高まったとも感じている。ある生徒は、スイーツの商品開発・販売に携わるなかで流通の仕組みの大切さを知り、フード・マネジメントを学べる大学を自分の進路に見定めた。一方、探究するほど世界が広がる楽しさを知り、進学先で留学や学生プロジェクトに旺盛にチャレンジしている卒業生もいる。 とはいえ、なかには主体性に火がついた活動までは至らない生徒もいる。だからこそ堂脇先生は「生徒の声を聞き漏らさないようにする」ことが重要だと考えている。 「以前に講演された方が生徒にこんな話をしてくれたんです。夢を口にしたときから『努力』は始まり、『責任』も生まれる。すると『協力してくれる人』も現れる、と。そうした経験をすべての生徒が味わえるような学校にしていければと思います」 後藤先生は、そんな仕組みが受け継がれていく体制も目指したいという。 「佐伯市では、学校の実践を核とした『ふるさと創生』に取り組もうと、市内の小中高の連携や、教育活動における行政や地域との連携を進めてきました。そのつながりをより堅牢なものにし、児童・生徒のやりたいことを周囲が応援する体制を整えていって、子どもたちがその将来や、佐伯市の未来を、自ら切り拓いていけるようにできればと思います」2の時に取り組んだ研究テーマは、地元の伝統文化の踊りを広めることでした。その研究の一環で、市役所でインターンシップをしたとき、職員の方から「高校生主催のイベントをやってみないか」と誘われたんです。やりますと答えて、予算書作成から企画・運営まで担うなかで、イベントで地域を盛り上げる面白さと、人を巻き込む責任の重さを実感して。もっとやってみたくなり、高3の時の課題研究では、地元商店街をイベントで盛り上げることに挑戦しました。 そうした経験が基になり、進路には佐伯市役所を選び、今春からまちづくり推進課で働いています。国家公務員一般職にも合格したのですが、この地域でできることを探りたくなったのです。正直、高校入学前は「将来は給料が良くて安定したところに」と思っていたのですが。「若いからまだいいや」ではなく、高校で地域のことを真剣に考えたから、やりたいこと、できることが広がったのだと思います。高校3年間で得たものを絶対に無駄にしたくないです。周囲の大人が応援するなかで児童・生徒が未来を創造する大人が脚本を描くのではなく生徒が失敗しながら探究する佐伯豊南高校OB(現・市役所勤務)後藤臣飛さん高探究設計へのヒント生徒が自分で課題を見出せるように地域のことを多方面から学習・探究する活動で揺さぶりをかける1探究の質を高めていけるように研究内容を発信して反応をもらって改善する機会を多数創出2主体的な探究活動ができるように生徒の想いに耳を傾け応援する立場に教員や地域の大人が回る3「若いからまだいいや」ではなく高校で地域のことを考えたから、やりたいこと、できることが広がった探究で育む生徒の資質・能力佐伯豊南高校 (大分・県立)Report 1192018 OCT. Vol.424

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