キャリアガイダンスVol.424
23/66

 幼稚部から高校までを擁する玉川学園では、欧米の教育に比べて日本が後れを取っていた「自分の考えを伝える力」を養うべく、すべての教育段階の総合的な学習の時間で探究活動に力を入れている。その中で、中学生までに学習させる「学びの技」は、同校を特色づける取り組みだ。特に、中学3年次の必修授業の「学びの技」では、自分で設定したテーマについての論文を書くために必要なスキルをじっくりと身につけながら、課題研究を行い論文を作成。さらに、そのスキルを基に、高校1〜3年次には「自由研究」で、より高度な課題論文を書いている(図1)。 この取り組みの背景として、「自由研究」は同校の創立当初から実施していたが、近年は研究内容や発表が形骸化していたことがあった。また、大学に進学すれば自ら研究テーマを見つけて論文にまとめる学びに直面するが、高校段階でそれに必要な力を十分に身につけずに進学する生徒が多かったという。 「高校が教科の知識の詰め込み中心で、大学の準備教育の場として機能していないことに課題を感じていました。変化の激しい現代社会のなかで、生徒たちは新しい知識を創る側にならねばなりません。そのためには生涯学び続ける姿勢とスキルが必要です。その力を身に付けるために、『学ぶことは楽しい』と実感できる人材に育てなければならないと考えました」(後藤芳文先生) 後藤先生がそう考え始めていた2006年に、図書館の発展系であるMMRC(マルチメディアリソースセンター)が開設された。書籍だけなく多数のパソコンが使え、教室のような学習スペースがあるMMRCを最大限活用した授業ができないかと、後藤先生がMMRC担当の伊藤史織先生、情報科の登本洋子先生と考案し、2008年から始めた授業が「学びの技」である。 中学3年での「学びの技」は、1年間できちんとした根拠に基づいた論文を書けるようになるために、必要なステップを網羅するカリキュラムとなっている(図2)。「学びの技」を設計するために、後藤先生たちは国内外のさまざまな探究学習についての文献に当たったり、直接他校や大学の授業を参観したり、先進的な取り組みをしている先生方に話を聞きに行くなど熱心に研究を積み、同校独自の手法を確立していった。 「学びの技」のステップで特に重要視しているのが、「論題(問い)の立て方」と「論理的な文章を作成する」スキルだ。 「論題の立て方」では、マインドマップ図1 玉川学園の2段階の探究学習取材・文/長島佳子1929年創立/普通科・国際バカロレアコース/生徒数686(男子278人・女子408人)/進路状況(2017年度実績)大学192人、専修3人、その他19人学校データ探究学習や論文執筆、プレゼンテーションに必要なスキルを学びながら、1年間で1つの論文を書き上げる自由なテーマで2年3カ月かけて研究、卒業研究として論文を書き上げるMMRCの中央に位置するマルチメディアシアターは、生徒たちが書籍を使いながら調べ学習をしたり、話し合いができ、探究型学習の授業に適した設計になっている。論題(問い)は、YES/NOで応えられるクローズドなテーマ。資料はすでにある先行研究などの二次情報の参照でも可論題(問い)は、オープンなテーマで、資料は自分でアンケート、インタビュー、実験などによって一次情報を収集する学びの技(中学3年生)自由研究(高校1~3年生)「学びの技」で身に付けたスキルを基にSSH、学びの技、模擬国連担当国語科教諭後藤芳文先生新しい知識を創出する人材に必要なスキルを身に付ける問いの設定から論文執筆まで学習ステップを網羅「学びの技」を身に付ける過程で自己の興味・関心を掘り下げ、生涯学ぶことを楽しめる生徒を育成玉川学園中学部・高等部(東京・私立)探究で育む生徒の資質・能力玉川学園中学部・高等部 (東京・私立)Report 1232018 OCT. Vol.424

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る