キャリアガイダンスVol.424
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にもかかわらず、進行が容易になったと教員も生徒も感じているそうだ。「学びの技」「自由研究」とも、130ページに及ぶ同校オリジナルのテキストに従って進められている。高校から入学する生徒もいるため、自由研究のテキストには「学びの技」のエッセンスも盛り込まれている。また、「学びの技」の学習ステップについては、後藤先生たちが一般向けの書籍としてまとめている(37ページ参照)。 「学びの技」は探究するためのスキルを身に付けることが主目的であるため、テーマは「YES/NO」で答えられるクローズドなものとしている。また、根拠とするデータは、先行研究などの二次資料でも可だ。一方、高校での「自由研究」ではテーマに自由度を与えてオープンテーマとし(図5)、分野によっては、データは実験やアンケート調査などの一次情報を、自分自身で調べることを促し、より高度な研究となっている。 「学びの技」の導入は、教員、生徒ともに積極的な学びをもたらしている。取り組みを始めた当初は、コアメンバーの先生たちが中心の取り組みだった。しかし、「探究型学習研究会」などで外部から高い評価を得られ、同校への志望者が「学びの技」を志望理由に挙げるようになり、今では学校全体での取り組みとなっている。 何より生徒たちの変化が先生たちの意欲につながっている。図6の感想にあるように、生徒たちは論文を書いたり発表するスキルに対する自信をつけただけでなく、自分の知りたいことを深める喜び、何気ない日常の中に疑問を感じることなど、知的好奇心が着実に育っている。そしてそれが次の学びへとつながっているのだ。 今後は、生徒が引用する根拠やデータの扱いを、教員がより正しく判断できるようになる必要があると後藤先生は考えている。 「『学びの技』も、改訂しながら進化させなければなりません。『進みつつある教師』が本校の教員のモットー。教員自身が学び続けなければならないと常に考えています」(後藤先生)図6 「学びの技」への生徒の感想「探究型学習研究会」のようす●情報収集や論文がこんなにも大変だとは思わなかった。けれど、自分にとって役立つことがわかったり、調べた内容が社会の授業に出てきたりとすごく楽しかったし、ためになった。●論文に不可欠な要素は「問い」「結論」「根拠」。この3つがそれぞれを支え合ってできる一つの論文で、さらに豆知識などを加えるとよりわかりやすくなるということを学んだ。人生で数少ない論文を書く体験ができて満足している。●「探究マップ」は論文を書くうえで欠かせないものだと学びました。これからもいろいろな知らないことを追究するときに使っていきたいと思います。●「学びの技」を1年間行い、新聞やニュースなどを見て「なぜ○○になるのだろうか」「本当に○○なんだろうか」と自分の中で瞬時に疑問がわくようになりました。調べていくたびに知識が増えていき、知りたいと思えるようになり、広い観点で情報を見られるようになりました。●普段、何気なく感じる疑問を調べて知識が増える喜びや達成感を得られた。●もともと作文が不得意で時間がかかってしまったりしていたが、「学びの技」の活動を通して作文が得意になった気がする。人前で話すことも苦手だったが、情報に自信をもつことができたため、ハキハキとしゃべることができるようになった。毎年10月に「学びの技」の中間発表として開催。10枚のスライドに研究の流れをまとめたポスターで、参観者に対してプレゼンしていく。図5 「学びの技」と「自由研究」の論文テーマ例学びの技自由研究水換えをしない水槽での観賞魚の飼育は可能か塩濃度の違いによってサンゴの成長率に変化は出るかリビングは勉強に適しているのか世界観光ランキングで1位のフランスと最下位のマーシャル諸島では何が違うのか悪性腫瘍を未然に防ぐことはできるのか表情やメイクが与える印象光質の違いはサンゴの成長に影響を与えるのか日本の食器と西洋の食器の違いと中国からの日本への伝達の経緯など人間の病気の治療に動物は有効か音によってストレス改善できるか 良いストレスと悪いストレスに違いはあるか日本の借金は増え続けても安全なのかメジャーリーグで日本人投手が怪我しやすいのはなぜか日本の子どもの貧困問題を減らすことは可能か原作小説からアニメーションへの変換について(映像表現、原作の再現)知的好奇心が育ち、学びの喜びを理解した生徒たち探究設計へのヒント探究に必要な力を伸ばせるように探究学習に必要なスキルを体系化し、目的と手段を生徒が明確に理解1生徒が自分で課題を見出せるように自分の興味と向き合うツールを提供し、教員が視野を広げる手助けをする2探究の質を高めるために教員自身が外部の講習や資料に多数触れて、積極的に新しいことを学ぶ3高校の自由研究は、学園オリジナルのワークブック形式のテキストに沿って進められる。基本的な流れは「学びの技」での学習ステップと同様で、論文作成まで使用する。探究で育む生徒の資質・能力玉川学園中学部・高等部 (東京・私立)Report 1252018 OCT. Vol.424

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