キャリアガイダンスVol.424
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社会の中で必要とされる技術を主体的に生み出せる人間力の高いエンジニアを育成まとめ/長島佳子 撮影/松倉修至1943年にその前身となる組織が設立された仙台電波工業高等専門学校と、1963年設立の宮城工業高等専門学校が2009年に高度化再編し、名取と廣瀬にキャンパスを置く仙台高等専門学校となる。建築、機械などの7学科制だったのを、分野を超えた学びを目指して2017年より総合工学科の1学科に統合。5年間の準学士課程と、2年間の専攻科を設置している。ロボティクスコースでは自主的な活動と対面授業を組み合わせる新しいカリキュラムを構築。仙台高等専門学校(宮城・国立)ふくむら・ひろし1953年生まれ。1983年東北大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了。修士時代まで高校教員を目指していたが、研究が面白くなり通産省工技院(当時)の研究員となる。最先端装置を用いた研究を続ける中、「まだ作られていない装置自体を考えることが真の研究」と考え、大学に研究の場を求める。京都工芸繊維大学助手、大阪大学助教授等を経て、東北大学大学院教授、同理学研究科・理学部長を歴任。学生たちから思いもよらない質問を受けたり、学生自ら実験方法を考え出したときに、教えることの醍醐味を感じた。2016年より現職。現職の打診を受けた際、「頼まれたら引き受けなければならない」という研究者気質で受諾。前任者たちが続けてきた教育改革を引き継ぎつつ、教職員の足並みを揃える改革に意欲を燃やしている。 歴史のある2校の高等専門学校(以下、高専)を再編し、2009年に本校はスタートしました。従来、ものづくりに携わるエンジニアの育成が高専に求められてきました。しかし、高度に複合化した産業界においては、単なるものづくりに留まらず、主体性や協調性をもち、広い視野で地域や国際社会に貢献できる人間力が必要です。それが本校の設立以来の教育目標です。 昨今、国内外の名のあるメーカーで、データの改竄などの不祥事が続きました。人の命にも関わる仕事の中で、自社が間違った方向に進もうとしたときに、アサーティブなコミュニケーションができる技術者が求められているのではないかと感じています。つまり、課題を自ら探り出し、解決策を提案し、その結果に責任をもてる技術者です。 こうした人材を育成するために、さまざまな学校改革に着手しています。2014年に、文部科学省の「大学教育再生プログラム」の採択を受け、アクティブラーニング(以下、AL)や、PBL(課題解決型学習)を導入してきました。ITやAIが主流の現代では、自分の専門分野だけでは解決できない課題があふれてきています。技術系ではない人文社会の分野の人々との協働も必要です。こうした場面に対応できるよう、他者との協働や思考力を高める学習方法を取り入れてきました。2017年からは総合工学科の1学科制にして、分野を超えて学ぶ自由度を学生に与えています。 私が着任した際、外部の方から、本校の学生は英語力と主体性に課題があると指摘を受けました。そこで、海外留学の推進や、英語教材を増やすなどしてきました。技術者の舞台は海外が多く、英語圏でなくても共通語は英語です。学生たちには「カタコトでもいいから英語でしゃべろう」とメッセージしています。 主体性に対しては、教職員が好きなことを発案して学生を集めて実施する「応募型教育関連プロジェクト」を発足しました。本校では午後の1時間40分、学生が自発的に学ぶための時間を設けています。その時間でやりたいプロジェクトに参加する学生が増えてきました。特にロボティクスコースでは課題に取り組む自主的な授業形態を「アクティビティ」と名付け、教育活動の中で重きを置いています。 今年の6月には、世界のトップレベルの大学が加盟する、新しい実践的な工学教育に取り組む共同体であるCDIOに加盟しました。CDIOでは、知識や座学に留まる学問ではなく、社会や産業界で必要とされる能力や技術を身に付けさせる教育が求められます。そのために、今まで実施してきたALやPBLにさらに磨きをかけていかねばなりません。 私が発案し、うまくいかなかった改革もあります。校長が一人で組織を引っ張ることはできません。教職員が同じ方向を向いて動き出したときに後ろから押すのが私の役割だと考えています。そのために、各々の考え方や方法を受け入れ、適材適所で今後も改革を進めていきたいと考えています。自分とは異なる専門分野の人々と協働して問題解決できる人材を育成課題に自主的に取り組む教育活動の導入へ福村裕史仙台高等専門学校 校長432018 OCT. Vol.424

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