キャリアガイダンスVol.424
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 指導者側の関わり方も見直した。授業を担当する教員や地域コーディネーター、大学生支援員と打ち合わせ、自分たちは「メンバーの一人」であり、「グループのリーダーはあくまで生徒」とのスタンスをとるよう徹底を図った。ただし、単に突き放すのではなく、課題解決の方向性を生徒自身が見つけやすくなるよう、「地域がどうなることを目指して活動するのか」というゴールを意識させるなどのサポートに一層力を入れている。 教員の主導を控えることで、昨年度ほど提言のレベルが高まらない可能性はある。しかし、「プロジェクト」の目的は、素晴らしい提言をすることではなく、生徒の成長にあるとの考えだ。 「やらされ感で地域課題を解決しても、生徒にとってはあまり意味がありません。逆に、失敗したり未完成のまま終わったとしても、それが生徒自身が考えて行動したことなら、経験として生徒のなかに残り、今後に活きてきます。無駄なことは何ひとつない。思い切ってやってみよう。生徒にはそう呼びかけています」(3学年主任・宮﨑智憲先生) では、そんな生徒の成長を測る評価については、どう行っているだろうか。「プロジェクト」設計時には、経済産業省「社会人基礎力」を参考に、学年ごとに身に付けたい能力を設定。これらを指標として、学期ごとに自己評価と教員評価を行ってきた。 そこに今年度の3学年ではルーブリックを導入・開示し、この取り組みによって目指す姿を生徒自身に具体的にわかりやすくした(図3)。また、教員による評価票では、ルーブリックのレベルを示すだけでなく、伸びた部分に焦点を当てたコメントを記入し、生徒の前向きな気持ちを引き出すよう工夫している。 3年間の「プロジェクト」についての生徒の振り返りには、自分自身の成長を実感するコメントが目立つ(図4)。 「チームが思うようにまとまらなかったり、苦手な発表に取り組まなければならなかったり、それぞれに大変だった様子です。一方で、それを乗り越えたことで自分の成長を実感し、この経験が社会で活かせるとの感想が多くあがっています」(堀内先生) 進路面への良い影響も出ている。「プロジェクト」導入前、就職・進学の面接で自分自身を語れないことが課題だったが、今は自信をもって自分の体験を語る姿が多く見られるようになった。また、地域学習をもっと深めたいと大学進学したり、大学卒業後は地域に戻って学んだことを活かしたいという将来設計をもったり、地域に対する思いの強い生徒が育っているという。 「この取り組みは種まきのようなものです。すぐには顕著な効果は見えないかもしれませんが、この『プロジェクト』で育んだ意欲や力が、10年後、20年後にどんな花を咲かせるかを楽しみにしています」(栁井先生) 「地域の元気の拠点」を目指して取り組み始めて3年あまりが経ち、同校に対する地域の視線は明らかに変わったという。「プロジェクト」の活動が広く知られ、地域の側から同校に協働プロジェクトを提案されるケースも出ている。このように地域から注目されることは、教員の意欲のもとにもなっているようだ。 「教員も生徒と一緒に地域に出ていくなかで、地域からの期待を肌で感じ、地域に貢献できる人材を育成するのだという責任感が高まってきたように感じます」(栁井先生) 谷村校長は、今後、同校の学びがさらに進化するなかで、例えば「地域医療を支えたいという生徒がいたら、実際に医学部へ進学させることができる学校」を目指していきたいと考えているという。 「そのためには、地域貢献の意欲や力を育むと同時に、生徒が希望する将来をつかむための学力が身に付く学校となる必要があります。授業力の向上を図るとともに、小・中学校とカリキュラム面で連携するなど、一層地域に根差して改善を図っていきたいと考えています」(谷村校長)総務・企画部長栁井知雄先生1学年主任堀内理香先生教頭野村健一先生校長谷村孝二先生3学年主任宮﨑智憲先生ルーブリックを導入し伸びた点に焦点を当てる地域からの注目・期待に取り組みの重要性を実感※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.424)2学年主任多田 須美子先生目指す職業に就いたとき、「プロジェクト」の経験が活かせそう●今「プロジェクト」で、佐川町に道の駅を作ることを目指して活動しています。僕は佐川町の出身なのですが、高校で学ぶまでニラやお茶がこんなに有名だと知りませんでした。道の駅では、そんな地域の良さをアピールしたいと考えています。単に特産品を販売するだけでなく、例えばニラ狩り体験のような体験イベントも企画して、周辺にある道の駅を越える内容にしたいですね。 こんなふうに、グループでコミュニケーションしながらアイデアを出し合い、計画的に物事を進める授業は、やりがいがあって、僕は好きです。将来の目標である英語教師になれたときも、この経験はきっと活かせるのではないかと思います。(藤田くん)●「プロジェクト」では、佐川町のPR動画の制作に取り組んでいます。目指しているのは、10代~30代の若い人たちが佐川町に出掛けたくなるような内容です。高知駅から電車で佐川駅にたどり着くまで、車窓の風景やご当地グルメなどの写真をつなげて、コマ送り動画のように仕立てたらどうだろう、とグループで話しているところです。 私には小さいころから、保育士か幼稚園の先生になるという夢があります。2年生で保育園のインターンシップを行ったとき、保育士は子どものために自分で考えて行動することが大事だと感じました。「プロジェクト」を通じて、その姿に少しずつ近づけているかな、と思いながら取り組んでいます。(片岡さん)(写真左から)3学年 藤田 駿くん・片岡瑞穂さん512018 OCT. Vol.424

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