キャリアガイダンスVol.424
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■ 順天中学校・高校(東京・私立)補足説明で期待感を高めていく。 「実はね、関わりの薄い人に手紙を書くほうが感動するんですよ。エピソードを一個書くわけだけど、もらった側は『私のこんなところを見てくれていたのか』となるから。感動して泣き出す生徒が毎年いるほど。ルールがあります。渡すまで誰に書くのか絶対に言わないこと!」 生徒たちはくすぐったそうに顔を見合わせる。そこへ和田先生は、もう一つ読んでもらいたい手紙がある、と促した。 再びペアで読み進めたのは、片目のない母から、彼女の容姿が嫌で長年遠ざかってきた息子への手紙だった。実は母の片目は、幼少時に大病を患った息子に移植されていた。母はその事実を手紙で初めて打ち明けたのだ。読んだ息子は泣き崩れるが、その手紙には最後まで彼に対するメッセージは書かれていなかった。 「なんでだと思います?」と和田先生。 「…会うつもりがないから?」と生徒の声。 そうだよね、と和田先生が続ける。が「どんな内容だった?」「どんな意見が出た?」と投げかけ、生徒が手を挙げて答えては、全体で学びを共有するのだ。 取材当日の教科書の題材は「制服に賛成か反対か」。最後に、じゃんけん大会で選ばれた女子生徒が内容のまとめと自分の意見を発表した。彼女は制服に「賛成」。朝は時間がなくて服選びに悩んでいられないし、たくさん服を買うお金もないから、と英語で持論を展開した。 授業の後半は、和田先生が用意した独自のテキストを、これまたペアで助け合って読み込む。まず目を通したのは、妻から30年連れ添った夫への手紙だった。かつて自分に大告白をした不器用な夫に、その出会いと家族が宝物になったと振り返り、「私は今でもあなたの太陽?」と投げかける。エピソード・感じたこと・メッセージがきれいに展開された名文だ。 それを参考に、生徒たちもこの3つの要素を入れた手紙を、ランダムに選ばれた級友に書くことになった。和田先生が 「メッセージとは人とつながろうとする意志なんですよ。言葉というのは人とつながろうとして使うんです。息子は会いたくないはず、だからあえてメッセージは書かない。母の愛なんだよ。でもそんなの切ないよね。もっと豊かにつながりたいじゃないですか、言葉を使うなら。だから、これから友達に書く手紙には豊かなメッセージを入れてほしいんです」 2年生後半から3年生の授業では、関わり合いを楽しみつつ知的な要素も増やす。特に3年生には、受験対策を兼ねながら「英語を使って世界を知る」こともできるよう、計画的に授業を展開する。 3年生の夏前までは、基礎体力をつける期間。語彙や文法の習得、論理展開の理解を進める。ただし単調な学習ではない。例えばかるた取りのような単語復習。生徒がプリントに英単語を散りばめて書き、和田先生が日本語を読み上げたら、該当する英単語を相手より早く見つけることを競う(54ページ上段写真参照)。 夏からは、和田先生がセレクトした過去の入試問題を使い、世界の課題にふれる。環境問題や飢餓、格差などを題材にした長文を生徒同士で助け合って読むのだ。その際は世界の課題が「自分たちと関係している」と感じさせる工夫も施す。 例えば、絶滅危惧種にふれた長文を読むとき。生徒に今持っているお菓子を机の上に出させ、成分を確認して「君は動物たちの絶滅に加担しているね」と言い放つ。教室には「何言ってんの、この人」という空気が漂うので、すかさず「どういうことか読んでみましょう」と促す。そのうえでhabitat fragmentation(生息地の分断)という語句を掘り下げる。絶滅危惧の要因は、現地にオイルをつくるプランテーションが増えて生息地が分断したこと。そのオイルがお菓子にも使われているのだ。和田先生が投げかける。 「この語句がわからなくても試験で満点は取れる。だが、ここがわからなければこの文章を読んだことにはならない」 2学期からは、自分たちと関係する世界のためにできることを模索する。過去問を使って、医療支援や経済支援、教育支援のあり方などを読んで学ぶのだ。 まとめるならば、英語で人とつながり、世界を知り、自分にできることを考えるのが、和田先生の授業の骨子だといえる。 「英語〝を〞学び、英語〝で〞育む。両方あるのが自分の目指す英語教育です」3年生の授業。受験対策と世界を知ることを兼ねた長文読解が中心となるが、一人で取り組むのではなく、ここでも生徒がペアやクラス全体で助け合って進めるのが基本となる。手紙のテキストに、エピソードなら赤、感じたことなら青、メッセージなら緑のマーカーを引いて文章展開への理解を深める。論説文を読むときも同じように論理展開の基本を学ぶ。1年生の授業。教科書などの英文読解も、それに対する自分の思いの表現も、生徒同士ペアで助け合って行うのが基本。ペアはなるべく異性と組むように意図的に分けるという。英語を使って世界に目を向け課題への向き合い方も学ぶ中高一貫校(高校からの入学可)、SGH指定校。教育理念に「英知をもって国際社会で活躍できる人間を育成する」ことを掲げる。進度の早い「選抜クラス」と基礎からじっくりと理解を深める「標準クラス」で生徒の進学をサポート。海外修学旅行や海外留学、留学生受け入れなどを通して、国際教育にも力を入れている。また、多数のボランティア活動の機会を提供することで、福祉教育にも積極的に取り組んでいる。普通科/1834年創立生徒数(2018年度) 737人(男子360人・女子377人)進路状況(2018年3月実績)大学227人・その他41人〒114-0022 東京都北区王子本町1-17-13 03-3908-2966 https://www.junten.ed.jp/552018 OCT. Vol.424

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