キャリアガイダンスVol.424
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HINT&TIPS 和田先生は高校生の頃、勉強を全然しなかったそうだ。毎日テコンドーに夢中だったからで、高校卒業から半年後に世界大会のメダリストになったほど。 けれども、メダリストとはいえ無職無所属だった19歳のときに、大学生になった同級生に引け目を感じたという。 そこで一念発起して大学受験を決意する。当時の英語の偏差値は30。そんな和田先生に、高3のときの担任の先生は「英文をたくさん読むことね」と助言してくれた。この「読む」を「音読」と勘違いした和田先生は、1節ほどの英文を1週間ですらすら言えるレベルまで音読する学習を繰り返した。音読できる英文とその内容が頭に蓄積されるほど、リスニングや長文読解、英作文問題で「あの文を使って考えたらどうか」と応用が利くようになり、半年後には模試の偏差値が70を超えたという。独自の学習方法の基礎が確立された体験だった。 大学と大学院では、テコンドーと英文学研究に励んだ和田先生だったが、高校の非常勤講師を「自宅近くで条件もよかった」ので引き受けたのを機に、目指す道が一変する。生徒に思いのほか喜ばれ、 「誰かの役に立てるのっていいな、と。そこで初めて教師を志したんです」 そうして正規教員となり、意気揚揚と勤め出したのが順天中学・高校だった。 だが、すぐに挫折を味わうことになる。 当時の学校には勉強嫌いの生徒が少なからずいたが、和田先生のクラスではそうした生徒たちが自主退学してしまったのだ。また、担任したときは素行の悪かった女子生徒が、2年生になって選抜クラスに移ると、見違えるように真面目に勉強しはじめたのも目の当たりにする。 「僕はその生徒たちの学ぶ権利を守ってやれなかったわけです。それからは、胃は痛いし、学校には行きたくないし、辞めたいとばかり思っていました。でも、あと1年だけ本気でやってみよう、それでダメだったら辞めようと決めたんです」 校外の研修にどんどん参加し、1年間で約350の授業を見学。校内でも同僚と授業研究を重ねた。そこで得たことを授業に生かすうちに、「しっかりと学び合うことができると、人は優しくなるんだ」ということを生徒たちから教わった。自分の軸となる教育の理念が定まった。授業ができるまで原点は偏差値30から巻き返した実体験教師としての挫折すべてを賭けた次の1年左より和田 玲先生、堀内 進先生(理科)、小林光一先生(保健体育)■ PICK UP1教師対生徒のコミュニケーションの場にせず、みんながお互いの顔を見て表現し合う場に和田先生は、教師という存在を生徒に「すべての正解をもたらす権威」と思わせないことを大事にしている。机はできるだけ生徒同士が顔を向き合わせるコの字型に(54ページ下段写真)。生徒同士で学びを深めるスタイルを基本にし、「間違えても問題ない、お互いに助け合えばいい」と何度もくり返している。2読ませる英文、読みたい英文を用意し英文の論理展開や語彙になじませる独自の教材を使うとき、和田先生はまず自分が大量の英文を読み、選抜した良文を生徒に届けている。その上で、読みたくなる仕掛けを考え、英語の論理展開の基本をレクチャー。さらに、深い理解を求める問いを投げ、議論の活性化をはかる。3高校での体験にリンクした教材を用意し体験の意義を深め、英語を使う意欲も高める高校での体験がより濃密になるよう、和田先生は行事の前後などに授業でもリンクした活動を行う。体育祭や文化祭のあとに、発見した級友の良さを本人に伝える英語の手紙を書く、海外に修学旅行に行く約2カ月前から、ホストファミリーに英語で何を話すか考える時間を毎授業取る、といったように。4生徒の心境の変化に合わせた活動で生徒の成長を促し、英語を使う意欲も高める1年生や2年生の春は、このクラスでうまくやっていけるか不安な時期。お互いがつながり合う英語の活動を大事にする。2年生も後半になると、卒業後の進路を意識し出す。そこでこの世界や自分にできることを考える英語の活動も増やす。そうやって生徒が自分の成長のために英語を使っていく。和田「堀内先生は僕の恩人で、苦しかった時期から相談に乗っていただいています。その堀内先生と始めたのが授業研究プロジェクトです」堀内「和田先生は、生徒が主体的に動くにはどんな教材をどう投げかけ、どう展開するか徹底的に研究されていて、教科を越えて参考になります」和田「堀内先生に相談したときに『学ぶプロセスを丁寧に考えることが大事では?』とアドバイスしてくださったのが大きかったんですよ」小林「僕にとって授業研究プロジェクトは帰る場所です。授業で悩んだときに相談できる場があるから、いろいろ挑戦しよう、と思えます」堀内「生徒が意欲的になるような授業をしたい、という原点を忘れたくないですね。何年授業をしても、その出来にもう満足した、なんて言えませんから」研鑽し合い、悩んだら帰る場所でもある順天中学校・高校の「授業研究プロジェクト」じゃんけん大会の結果、英語で意見を述べることになった生徒。堂々としていたが英語は不得意だそう。「でもこのクラスのみんなは間違えても笑わないから」と本人談。ゲーム性のあるワークも多く、生徒がガッツポーズや叫び声をあげる姿をよく見せる、というのも和田先生の授業の特徴。562018 OCT. Vol.424

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