キャリアガイダンスVol.426
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る」という考え方です。「子どもは何もできない存在だから大人が教え込む」ではなく、自ら育つ力を存分に発揮させてあげることが、私たち教員の大きな役割ではないでしょうか。 大人はつい「こうしなさい」と言葉をかけたくなりますが、実は教えなければ教えないほど、子どもは自ら学びます。例えば、本園では、屋上デッキから大ケヤキに登れるようになっていますが、「気を付けなさい」と言われるまでもなく、最初からてっぺんまで登ろうとする子はいません。手が届くところから挑戦を始め、時には足を踏み外したりしながら、繰り返し挑み、少しずつ登れるようになっていきます。このような小さな満足感や達成感の積み重ねが、自信になり、自立へと向かうのではないでしょうか。 本園は「幸せな未来をつくる」という理念のもと、思いやりがあって自立した子どもの育成を目指しています(図2)。課題にぶち当たっても、自ら工夫して解決策を考えたり、新しいものを生み出していく。それこそ、「未来をつくる力」になっていくのだと信じています。 子どもが自ら学ぶと言っても、それを教員がどうサポートするかは重要です。本園ではどんな取り組みを行っているか、いくつか紹介しましょう。 先日、たまたま紙製オペラグラスの頂き物があったので、園庭でバードウォッチングをしました。図鑑からコピーした鳥の写真を木にぶら下げたフィクションですが、それを見つけると子どもたちは大喜び。さらに、「もっと上にはどんな鳥がいるかな?」と視線を上に引っ張ると、「スズメがいたよ」「カラス大きいね」と空を飛ぶ本物の鳥に興味を示す子も出てきました。 こうして遊びをきっかけにすると、自然に興味は広がるものです。子どもにはさまざまなことにチャレンジして、自分が好きな何かと出合い、もっと知りたいという気持ちを育ててほしい。そのために先生たちは、恐竜の骨や卵を工作して園庭に置いて子どもに発見させてみたり、落ち葉プールを作ったり、とにかく面白いことをたくさん企画しているのです。 また、子どもには自分の意思をもってほしいので、日常生活のさまざまな場面に自己選択の機会を設け、常に「あなたは何をしたいの?」と問いかけています。例えば、本園では、みんなでこれをやりましょうという集団の活動のほか、思い切り自由に遊ぶ時間も重視しています。外で走り回るなり、室内でお気に入りの教具で遊ぶなり、子ども一人ひとりが自分で何をするか決めて活動します。そこでの先生の仕事は、子どもにとって魅力的な環境を整え、子どもに選択の自由を与え、適度な距離感で自発的な活動を援助すること。それによって、子どもがもつ力を自ら伸ばすきっかけを提供しているのです。 このほかにも、昼食を園の給食にするか家庭のお弁当にするかを選択したり、園内で着るTシャツを8色のラインナップから自分で選んで着たり、自己選択の機会をできるだけ多く作るようにしています。「自分で選んだことをする」こそ、本当の平等。みんあなたは何をしたいの?常に問いかけ、自分の意思を育む写真上:引き戸をぴったり閉めることで、物事をきちんとする気持ちよさを体で学ぶ/同左下:トイレ出入口にスリッパ型テンプレートを設置すると、子ども自らスリッパを揃えるように。枠にはめることで小さな達成感を得ている/同右下:お昼は給食かお弁当か選択可能。子どもの意思を大事にしている。興味関心との出合いや自己選択の機会を与える“自ら育つ力をもって生まれた”子どもたち。その出発点における、教員の関わり方とは加藤積一(ふじようちえん 園長)142019 FEB. Vol.426

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