キャリアガイダンスVol.426
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(出典)溝上慎一・電通育英会共同調査「トランジションの観点から見た社会人のパーソナリティタイプと職場適応・能力との関係」(25-29歳の正規雇用社会人を対象)(未公刊)社会人のタイプと職場適応・能力との関係図1中点pタイプ1pタイプ2pタイプ3pタイプ4pタイプ5組織社会化能力向上他者理解力計画実行力コミュニケーション・リーダーシップ力社会文化探究心●3つの因子によるタイプの分類●各タイプと職場適応・能力との関係事し、社会生活を営めるようにするためではないのでしょうか。 協働や探究をする力は、社会の変化とともにますます必要になります。 具体的に社会がどのように変化するかは、2016年に出された学習指導要領改訂に向けた答申(※1)や、2018年の高等教育のグランドデザインの答申(※2)で示されているので、私からは世界最速で進む日本の少子高齢化も課題になる、という一点を共有させてください。 数十年後には、日本の生産年齢人口(15〜64歳)が5000万人を切ると予測されています。これは高度経済成長期よりも前の時代と同じ規模で、しかも以前は働き盛りの層が多かったので社会が活力に満ちていましたが、訪れる未来は、高齢者層も5000万人いる社会です。 税収は減り、行政サービスの維持が難しくなり、各地で医療や交通、モノの流通に支障が出る恐れがあります。そのなかで皆でどう生活を営むのか。社会的に解決しなければならない問題だらけになるのです。 生徒たちの20年後や30年後を見てほしいんですよね。その未来を思い描いたとき、「話すのは苦手だが個人でよく考えている」「知識の習得は得意だ」で済ませてよいのでしょうか。 私は別に「全員が素晴らしいパフォーマーになれ」と言いたいのではありません。発達障害やその可能性のある生徒など、協働学習を行うには配慮が必要になる生徒もいます。生きづらさを抱える人をはじめ、すべての人が排除されないよう社会で共に助け合うという、ソーシャルインクルージョンの理念も大事です。 とはいえ、一人ひとりが社会的な問題と切実に向き合わねばならない現実がある以上、少なくとも「自分の考えをもち」「人と一緒に意見を出したり受けとめたりし」「協働したことを個々に振り返る」ことは、どの生徒や学生もできるよう支援するのが、教師の仕事だと思うのです。個の活動から協働の活動にすべて切り替えるわけではなく、個と協働のバランスが大事。そして協働ができてこそ、個の力も生きてきます。 このような声を耳にすることもあります。「コミュニケーション力や探究心は大学で開花させればよく、高校はより良い大学に行くための受験勉強に専念すればいい」と。 しかし、そうした資質・能力というのは、基本的に積み上げで段階的に発達することを知るべきです。 私は2013年より、京都大学高等研究開発推進センターと河合塾の共催で「学校と社会をつなぐ調査」、通称「10年トランジション調査」に取り組んできました。調査開始時に高校2年生だった全国の4万5000人を、10年間追跡する調査です。大学3年生になるところまで調査・分析が終わっているのですが、その結果から、資質・能力は大学ではなかなか育たず、高校2年生の秋ごろまでにある程度仕上がることがわかりました。また、偏差値上位の大学ほど資質・能力の高い学生が多くなることは特にあり個性を理由に「育てる」対象から除外していないか大学からでは資質・能力がなかなか育たない現実がある数十年先まで見据えたとき生徒には何が必要になるか(※1)中央教育審議会『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について   (答申)』(2016年12月21日)(※2)中央教育審議会『2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』(2018年11月26日)pタイプ1pタイプ2pタイプ4pタイプ3pタイプ5外向性開放性勤勉性「生徒」と「自分」の社会参加の在り方を考えてほしい溝上慎一(桐蔭学園トランジションセンター 所長・教授)172019 FEB. Vol.426

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