キャリアガイダンスVol.426
19/68

点に、幼稚園から大学までが、どのようにバトンを渡していけば、児童・生徒・学生の力強い学びと成長を促せるか、研究したいのです。 合わせて構想していることがあります。学校を、大人にとっても、自身のキャリアや地域・社会への関わり方を考える場として機能させることです。桐蔭学園には生涯学習センターがあり、地域の大人たちの学びの場にもなっていましたから。学校がどの世代にとっても学ぶためのハブになり、その学校での活動を通して地域・社会を変えていく。そんな学校機能の拡張を目指したいのです。 こうした仕事は、今後立場が変わっても、定年を迎えても、続けていきたいですね。頭と体が動くかぎり、ずっと研究者でいたいので。 似たような気持ちは先生方にもないでしょうか。なぜ仕事をするのかといえば、まずは義務感が先立つかもしれませんが、仮に給与がなくても社会的な関わりをもちたい、という思いはあるはずです。定年後はのんびりしたいという先生もいますが、1年も経たず飽きると思います(笑)。 人生100年時代。先は長いですから、生徒だけでなく私たち大人も「社会参加」の意識をもうちょっと強め、できることをみんなでやりませんか? 所属先の名刺や肩書とは別に、地域活動でも国際協力でも何でもいいので、自分が社会にどう関わりたいかを言い表す「二枚目の名刺」を作る、という意識で。要は、社会的存在たれ、ということですね。 では社会参加の一歩として何から始めるか。学校現場にいるなら、私は「アクティブラーニング型授業への転換」という、わかりやすい障壁に挑むのがよいと思います。その取り組みを通して、生徒の資質・能力を高めることを本気で目指します。 生徒は将来さまざまな社会的な問題と向き合うわけですが、教育改革はまさに教員にふりかかった社会的な問題。生徒たちに範を示せるよう、私たちがまず問題解決に挑むのです。 壁を乗り越えるのは容易ではありません。私も桐蔭学園で、先生と一緒に高校生のゼミを始めたのですが、脱落者が出たり、理解したはずのことが定着していなかったりと、課題だらけです。そうなった原因は、私がまだ高校生の心をわかっていないこと。そしてチームを組んだ経験豊富な先生でさえ、躓いている生徒の支援には悩んでいることでした。 ですので、今はゼミの生徒たちのそばで現時点の学びのプロセスを観察し、そこにどんな支援をすることができるか考えているところです。 高校の先生は教科の専門家であり、私も心理学と教育学という専門分野をもっていますが、お互いに知らないことはまだたくさんあります。わからないことは生徒と一緒に学び続ける姿勢が大事だと思うのです。私たちも成長を続けて、社会のためにできる仕事をしていきましょう。仕事は義務感だけでやるのではないあなたは社会で何がしたいですか?桐蔭学園には、幼稚園から大学(桐蔭横浜)まである。写真は、園児と一緒に芋掘りをした翌日、一人ひとりから成果報告を受け、感謝状をもらったときのもの。園児にとっては溝上先生への発信が学びになっている。自分の人生をどうしたいのか社会参加を念頭に考えたい「生徒」と「自分」の社会参加の在り方を考えてほしい溝上慎一(桐蔭学園トランジションセンター 所長・教授)192019 FEB. Vol.426

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る