キャリアガイダンスVol.426
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「育休後は二児の育児との両立が待っています。生徒を管理下に置くことを諦めて手放し、彼らの自主性に任せるタイミングでした」 復帰後は、生教材、オールイングリッシュ、AL、反転授業を取り入れた授業を推進。プロジェクトベースの授業を行っているうちに、生徒が自分たちでプロジェクトを立ち上げるなど、教員の予想を超える発想で活動をするようになっていた。 個人の取り組みでは、学校内外の教育関係者を集めたワークショップなどを主催し始めた。 「ソーシャルキャピタルが一気に増大していきました。周りからフィードバックをもらうことで、自分の在り方をメタ化することができるようになったのです」 2015年にアップル社のApple Distinguished Educatorsに選ばれ、世界の教員が集まる研修に参加した。海外ではALや反転授業は珍しくないため、自分の強みについて考えたとき、生徒たちのマインドセットを変えていくことだと気付いた。それを有機農法の土壌開発になぞらえて「オーガニックラーニング」というコンセプトをたてたのだ。「自分のライフワークを見つけたと思いました。このコンセプトに共感してくれとパートナーのペアとなり、他己採点やペアワークで授業を進める仕組みをつくった。省力化と平均的な成績アップは達成できたものの格差は広がったように感じた。そのころ、学級崩壊の夢を頻繁に見るようになった。 「成果は上がっても、自分の心が喜んでいなかったのです。自分がありたい姿はこれではないと感じていました」 特進コースの担任を長年経験した後、新設の英語特化コースを受け持つことになった。同じころ、学校にICT導入が始まったことが、江藤先生の転機となった。 「英語特化なので、オールイングリッシュなどやりたかった授業ができると思いました。また、iPadを貸与され、自分もオンラインの世界に出てみたのです。以前から情報収集にWebは活用していましたが、自分から発信してみようと、ブログやSNSを始めたのです。すると人が集まってくる。自分がやっていることに価値があるんだと、人生で初めて自分が必要とされていると感じることができました」 英語特化コースの2年目に、次男出産のために半年間の育休に入る。自分が不在でもiPadを使って生徒たちが自主的に学べるような仕組みをつくった。ーニングとは、有機農法が土壌の改善に力をかけるように、マインドセットの開発にじっくりと取り組み、アクティブラーニング(以下AL)による学びを浸透しやすくすることで、生徒の成長を早め、生涯学習力をつける学習アプローチのことだ。それを現場で実践しながら、さまざまなワークショップやセミナーを企画し、全国の教育関係者とのつながりを広めている。 しかし、21年間勤務した前任校での最初の10年は、生徒たちを偏差値の高い大学に進学させることをミッションとしてきた。 「圧政をしいて生徒を怒鳴りつけ、質より量で、生徒に膨大な問題集やテストをやらせていました」 しかし、長男の出産・育児を境に、働き方を変えることを余儀なくされた。効率を上げるために、生徒がリーダーる仲間をひろげるために、社団法人を立ち上げました」 オーガニックラーニングの活動を通じて多様な仲間と出会うなか、さらに自分の心が喜ぶ方向に飛び立ちたくなり、前任校から巣立つ決意をした。 「自分を変えるには、ソーシャルキャピタルは不可欠です。学校の中だけにいると、自分を相対化することができません。オンラインの世界に出れば外の人とも簡単につながれます。 リアルで参加する研修などは、人から与えられるだけでなく、少人数でも自分から人を集めて価値を提供する経験も必要です。誰にでも必ずある独自の価値の発見にもつながります」 自分自身は人に元気を与え、コラボするパートナーを見つける天才だという江藤先生。今後の目標は、若手の先生たちが改革の担い手となれる土壌をつくっていくことだと語る。オーガニックラーニング設立3周年のパーティーで。香里ヌヴェール学院・学院長の石川先生(右)との出合いのきっかけとなったのもこの活動からだった。オーガニックラーニング主催で毎年実施している教育イベントの「ラーニングスプラッシュ」。昨年は事業家と教育者が相互に学び合い、実際に使えるアイデアを創造する、「超」フィールドワーク型研修プログラムを実施した。教員歴15年を過ぎて、初めて自分が必要とされていると実感誰でも必ず価値をもっているそれを人に提供する活動を“これから”を歩む教員 5Stories242019 FEB. Vol.426
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