キャリアガイダンスVol.426
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かけがけのない体験となったのが、小松サマースクールという、今も続く夏季研修プログラムの立ち上げに運営委員長として携わったことだ。 「小松市でホームステイの受け入れをされていた方々と知り合い、訪れる海外の学生と日本の大学生による高校生向けサマースクールができたら面白いという話になったのです。地元のほか全国からも高校生の参加を募り、多様な人と交流しながら学ぶ。そんな場を実現させたくて、挑戦しました」 寺西先生にとって0から1を生む初めての事業。スタッフの募集、プログラム作り、地元での協賛金集め、集客などなど、やるべきことは多く、時間優先か質の追求か、成功重視かチャレンジかなど、リーダーとして重大な決断を何度も迫られた。 「合意形成や決断の難しさを痛感しました。複数の選択肢について、意見を聴いて情報をいくら集めても、どれにも良い面があることは多く、自分に『こうしたい』という信念や軸がないと、決断のたびにぶれてしまうんです。そのことを身をもって学べたので、生徒たちの中にも軸となるものを育みたいという思いは一層強くなりました」 31歳の時に教職に戻った寺西先生は、現在、金沢高校勤務2年目となる。生徒が自分で道を切り拓くような教育をしたい、という目標は以前と変わらない。ただし、その教育をどうやって実現させるかという考え方には、変化が生まれた。 「まずは僕自身が『先生たちから学び、チームの一員として貢献できる教員』になりたいと思っています。生徒指導や教科指導など各分野に長けた先生から学び、力もお借りして、そうした先生方が得意分野でもっと活躍できるよう、外部との連絡調整など自分にできることはサポートする、といったように。そのうえで、これまでの経験を生かして『学校と外をつなぐハブの役目を担う教員』になりたいです。先生たちはすごく力をもっているし、学校の外にも頼れる人はたくさんいます。その全員が自分の強みを生かして最大限の力を生徒のために発揮できるよう、学校やこの地域にチームを築いていきたいのです」金沢高校の経済産業省中小企業庁と連携した起業家プログラムの授業。他にも金沢工業大学や北陸大学と連携したプロジェクトを同僚と共に進めている。 『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』という著書で、生徒たちが自ら学ぶアクティブラーニング型(以下AL型)授業の有効性を伝えてきた山本崇雄先生。一昨年には、すべての大人で未来の教育を考えるためのプロジェクト「未来教育デザインConfeito」を同僚東日本大震災で痛感した生徒が自ら学ぶ力の必要性山本崇雄先生武蔵高校・附属中学校(東京・都立)英語科教諭1970年生まれ。94年東京の公立中学校の英語教員としてスタート。2017年より現職。前任校の都立両国高校・附属中学校からの同僚である山藤旅聞先生と共に、学外で「未来教育デザインConfeito」を設立し活動中。自ら学び続ける生徒を育てるために選択した、“教えない授業”5Story取材・文/長島佳子チームの一員として貢献し学校と外のハブにもなりたい教員・生徒共に持続可能な学びとは何か。それを求めて仲間と変革の流れをつくりたい

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