キャリアガイダンスVol.426
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先生が明るくなることが不可欠だと奥田校長は語る。 「人は楽しそうな所に集まります。だからまず、校長である私が楽しく仕事をすることに決めたのです。生徒募集に苦労している学校に講演に行くと、先生が最初から生徒を批判する。『うちの生徒は全然ダメで』って。そんな学校の先生たちに限ってろくに挨拶もできない」 挨拶の大切さを確信した出来事があった。奥田校長は就任以来、できることから始めようと生徒たちに挨拶を徹底させてきた。ある日、銀行の役員から呼び出しを受けた奥田校長は「ついに融資の打ち切りか」と覚悟した。しかし驚いたことに、その役員は、視察の際に生徒たちから気持ちの良い挨拶を受けたことに感動し「変わりつつある創成館の再建をがんばってほしい」と激励しながら、融資を続けることを告げたのだ。 もうひとつ、学校改革に不可欠なこととして奥田校長は「カルチャー」を挙げている。 「学校に流れる空気感と文化は重要です。生徒も先生もカルチャーを理解して全面に打ち出す力が必要です。それを『明るく、笑顔溢れる学校』としました。教職員にとっては、先代の時と校風が真逆になったのでかなり戸惑いもあったようです」 しかし、本当に楽しいと感じていなければ明るく振る舞うことは難しい。先生方に楽しいと感じてもらうために、奥田校長は破天荒とも思える行動を次々に起こす。例えば、オープンスクールをK-1の入場シーンのように演出したり、校長自ら人気バンドの歌を熱唱したり、朝の職員会議では持ち回りで「すべらない話」をして笑いをとることを課し、教職員全員でハイタッチすることなど枚挙に暇がない。 「学校再建には給与カットなど、苦汁をなめる覚悟をみんなにしてもらわなければなりません。それでも私の改革についてきてくれると先生方が言ってくれたのです」 先生たちの想いは同じ、「自分の職場に誇りをもちたい」ことだった。 私立校の経営に生徒募集は最重要課題だ。不人気校の再生には、現場の 長崎の創成館高校といえば甲子園の常連校。野球部以外の運動部や文化部も全国大会で名をあげており、生徒たちがイキイキと学校生活を送る。今年から定員も増やした。その同校は、わずか15年前には経営破綻寸前だった。理事長・校長を務める奥田修史先生は、前任である父の急死により理事長職を引き継いだとき、学校を畳むことを考えていたという。 「先々代の頃からの負債が膨大になっていただけでなく、当時の学校は指導の難しい生徒を多く抱え、ある塾の学校ランキングでは県内最下位。しかも偏差値評価なしというどん底状態でした。自分自身、父の秘書として勤務していましたが、学校外の人に『創成館で働いている』とはなかなか言えなかった。それは先生方も同じでした」 そのことが、働いてくれている全教職員にも、生徒たちや保護者にも申し訳なかった。銀行からも融資打ち切りを匂わされていた。奥田校長は生徒と先生を守るために、学校を再生させる決意をする。「自分の職場に誇りをもちたい」 教職員の思いを叶えたかった校長の姿を見て「やっていいんだ!」と勝手に動きだした先生たち取材・文/長島佳子 撮影/笹井健太郎人は「楽しそう」な所に集まる。だから、学校も楽しくしたい管理職は“これから”にどう向き合うか学校が変わることを求められたとき、組織の長として自身と教職員、学校をどのように動かしてきたのか、創成館高校の再生ストーリーを伺いました。奥田修史校長創成館高校理事長・校長1971年長崎生まれ。ハワイ州立大学卒業、祖父の代から続く学校法人奥田学園に、当時の理事長であった父の秘書として就職。2003年、父の急死により32歳で理事長となり、経営破綻寸前だった学園を立て直す。2005年創成館高校校長に就任。1962年創立/普通科・デザイン科/生徒数783人(男子431人・女子352人)/進路状況(2017年度実績)大学104人、短大13人、専修75人、就職47人創成館高校(長崎・私立)学校データ崖っぷちに立たされ自らを変えた。学校改革にはリーダーの〝熱〞が必要282019 FEB. Vol.426

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