キャリアガイダンスVol.426
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 今は先生方の状況を聴いたうえで、『それでどうするの?』と自身に考えてもらっています。部下を信用して任せる。失敗したらやり直せばいいのです。それは対生徒でも同じです。学校改革とは教員の意識改革であり、まず校長から意識を変えなければ何も始まりません」 改革のビジョンやカルチャーを校長が決めた後、走り出した現場の先生方からは校長の思い以上の結果が返ってきた。甲子園出場も20年後くらいのビジョンのつもりが、先生たちは5年で成し遂げた。 「本校が短期間に改革できたカギは先生方の〝熱〞によるものです。学校は〝熱〞がなければダメで、いつの時代も生徒は〝熱〞を求めています。 当然、先生方の中には『生徒を何とかしたい』『勝たせてあげたい』など、悩みを抱えている人もいます。教員がもがき苦しんでいる生身の姿も、生徒に見せればいいと思います。教員でも親でも、大人だって試行錯誤しながら生きている。それを見ることで人がもつ『弱さ』と『可能性』を知ることにつながるからです」 同校の改革はまだ道半ばで、組織としても発展途上と語る奥田校長。これからの社会に出ていく芯の強い生徒を育てるためにも、改革の熱い火を消さない努力を続けている。そのために、新たな楽しいアイデアを今日も奥田校長は考えているに違いない。 校長が率先してこうした行動に出ることで、先生も生徒も「やっていいんだ!」と次々とアイデアを出して実行するようになっていった。体育祭で教員が仮装ダンスをしたり、体育祭の呼称を「フェス」に変えたり、雑誌のような学校案内なども現場の先生からの案だ。先生たちも楽しいことをやりたかったのだ。 「日本の学校には法律でもないのに『こうあるべき』という慣習が多すぎです。単なる思い込みであって、おかしい、もっと面白くできると思うことは変えればいいのです。校長は校風を作るプロデューサー。カルチャーを創造すれば、現場の先生方や生徒たちが積極的に考え、行動してくれるようになります」 校内を歩けば、親しげに生徒が近づいてくる奥田校長だが、理事長就任前は、斜に構えて人を見る冷めた人間だったと自己分析する。 「正直、自校の生徒のことすら色眼鏡で見ていました。しかし、経営破綻寸前という崖っぷちに立たされたとき、まず自分が変わらなければと思いました。生徒たちとちゃんと向き合えば、荒れて見えた生徒にも素直でいいところが見えてくる。先生方にも当初は高圧的な態度で接していましたが、命令したことは長続きしません。本人たちが納得して初めて改革を実行に移せます。つまり、私の意識の問題だったのです。学校改革は教員の意識改革現場の先生たちが学校を変えたオープンスクールで生バンドを従えて、『ウルトラソウル』を熱唱する奥田校長。校長ライブは名物となっている。 フェスとなった体育祭で、自分でつくった準備体操ダンスを先導するダンス部の生徒たち。毎朝の教職員朝礼は、全員笑顔でハイタッチで締める。管理職は“これから”にどう向き合うか292019 FEB. Vol.426

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