キャリアガイダンスVol.426
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 平成18年(2006年)に改正された教育基本法において、教育の目的は次のように改められました。――教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資・質・を備えた心身ともに健康な国民の育・成・を期して行わなければならない。(傍点は編集部) 本来「資質」とは、生まれもった性質のことですが、育成とある以上、育てられるものとして広義に捉える必要があります。社会の形成者として必要な資質であり、かつ教育で育てられるものは何かと言えば、まさに人格であり人間性だと思うのです。 ところが、コンピテンシーという言葉が経済界で使われ始め、教育の文脈でも「資質能力」と一括りで使われだすようになると、人格や人間性に関わる「資質」よりも、思考力や問題解決力など「〇〇力」として表されるような「能力」ばかりに重きが置かれるようになりました。より正確に言うと、本来「資質」に関わる部分が、「能力」の一部として論じられるようになってきたのです。 そうした傾向は極端に言えば、「能重視すべきは、「能力」ではなく人格や人間性に関わる「資質」自立した人格の形成なくして何のための教師か神奈川大学特別招聘教授名古屋大学名誉教授安彦忠彦あびこ・ただひこ●1942年生まれ。東京大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程1年中退。大阪大学助手、愛知教育大学助教授、名古屋大学教授、早稲田大学教育総合科学学術院特任教授を経て、2012年より現職。この間、名古屋大学教育学部附属中・高等学校校長、同大学教育学部長などを歴任。博士(教育学)。中央教育審議会正委員、臨時委員として、2003年の前回学習指導要領の一部改正、2008-9年告示の現行学習指導要領の全面改訂に関わるとともに、次期学習指導要領に向けた改訂のための有識者会議の座長を務める。専門はカリキュラム論、教育方法、教育評価。中央教育審議会委員として3回に及ぶ学習指導要領改訂に携わってきた神奈川大学特別招聘教授、名古屋大学名誉教授の安彦忠彦氏。矢継ぎ早に進む教育改革における留意点とともに教師としての心構えについて、思いのたけを語っていただきました。取材・文/堀水潤一 撮影/平山 諭302019 FEB. Vol.426

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