キャリアガイダンスVol.426
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ていないことに気付き、ノートに貼れる独自プリントを作ったこともあります。理解すること、自分のものにすることが大事だと思っていたので、作ったのは穴埋めプリントではなく資料集です。さらに発展させた『スーパー日本史ノート』と題した教材も、印刷製本して生徒に配りました。当時の私のライバルは予備校のスーパー講師たち。受験指導が得意で、何度も高3の担任をしました。 一生懸命やっているとそれを見てくれている人がいて、次のステップが拓けます。先輩教員から「実践をちゃんと発信したほうが良い」と言われて、『スーパー日本史ノート』を使った授業を公開したことがきっかけとなり、書籍の執筆をするようになりました。今の時代は、発信ツールが充実しています。論文でも、SNSでも校内の通信でも、なんでもよいので発信することを先生方には勧めています。そうすればあなたの良いところを認めてくれる人が、必ず現れるはずです。 4月に、私は教員としての最終年度を迎えます。教師を目指していた高校2年生のころ、専門教科に迷う私に「中島くんは何が好きなの?」と聞いてくれた先生がいました。得意な教科より歴史を選んだその時からずっと、好きなことに一生懸命取り組んでくることができました。これは、教師という仕事の幸福な一面です。 教師であれば皆、教えるのが好きで、授業をより良くしたいという気持ちをもっていますよね。私も、キャリアの初期からいろんな挑戦をしてきました。初任校では、学生時代に出会った梅棹忠夫の『知的生産の技術』に倣い、「カードシステム学習法」を考案しましたが、生徒が使いこなすには難しすぎる方法となってしまい、失敗でした(笑)。 板書計画を作って授業をしても、私が板書をしている間は生徒の頭が動い 教師としての可能性を広げ、キャリアを形成していくためには実践を磨くこと、そのためのインプットも必要です。本校の先生方には、学校という狭い枠を飛び出そう、積極的にセミナー等に参加しよう、と声をかけています。教科に関するものだけでなく、趣味やビジネス、なんでも構いません。私の場合は、日本史の教員として臨場感をもって伝えるためにと史跡や博物館に通い、旅行が趣味になりました。登山部の顧問になったことから登山にも打ち込みましたし、プラモデル製作やパソコンゲームにハマったこともあります。それらすべてがどこかで生かせるのが教師という仕事です。 本校で提唱しているAAL(アート・アクティブラーニング)も、マジンガーZからエヴァンゲリオンまでのアニメや、プラモデル作りから学んだことが生きています。AALは、人工知能の発達する時代において、左脳的な知識重視の教育だけでなく、アートやデザインを通してクリエイティビティや感性を育てることが大切との発想から。本校の先生方は、漢詩を絵で表現する授業など意欲的に取り組んでくれています。 ずいぶんと好きなことばかりやってきたと思われるかもしれませんが、どんなことであれ学ぶことをやめるのは教師としてありえません。なにかに夢中になって学ぶアクティブラーナーが、次のアクティブラーナーを育てるのだと私は信じています。今は変化の時代ですが、世の中が変わる時は自分も変わるチャンスです。みんなが試行錯誤する時代だから、人と違うことをやっても大丈夫。誰もが願う「より良く、もっと、幸せに」という自分の気持ちに忠実に生きませんか。 私自身も発展途上です。もしもう一度、教壇に立つことができるなら、思いっきりアクティブな日本史の授業をしたい、そう思っています。好きなことに一生懸命取り組める教師の醍醐味教師であることは学び続けること取材・文/江森真矢子 撮影/高橋良介世の中が変わる時は自分も変わるチャンス。教員も、自分の気持ちに忠実に生きよう 中島博司(並木中等教育学校 校長)352019 FEB. Vol.426

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