キャリアガイダンスVol.426
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 探究学習「イヨボヤプラン」が本格的に始まったのは2017年。従来の総合的な学習の時間委員会をなくし新たにイヨボヤ委員会を立ち上げ、進路指導主事の伊藤先生をまとめ役として分掌や学年を超えた教員が集まった。 とはいっても、まったく新しいことを一から始めたわけではない。地域と連携した取り組みは従来も行っていた。イヨボヤプランでは各取り組みを見直し、必要に応じてリメイク。そして、意味やつながりを考え、3年間を通して効果的に実施していくということが意識されている。 例えば、1学年の企業訪問も以前から実施していた取り組みだ。地元企業を訪問しそこで学んだことを発表する。17年度の1年生も同様にグループごとに企業を訪問したが、最後のポスター発表を通してどの企業の課題も少子化・高齢化・地域活性化の3つに集約されることがわかってきた。そこで、その3つを地域が抱える課題の柱として、2学年の村高ゼミに引き継いだ。自由テーマで依頼していた大学の出前講義を3つの課題テーマに沿った講義に絞って依頼し、ゼミ形式で生徒が学び、その先の探究活動の足がかりにするという流れにしたのだ。 このように個々の取り組みを次の取り組みにつなげ、3年間の学習に有機的な流れを作る。「そのためには〝見える化〞が大切」と伊藤先生。教員にも生徒にも協力者である外部の人たちにも、何のために今これをやっているのかを明示していき、全員がつながりを意識するということだ。 〝見える〞ための具体的な手段のひとつが生徒が1冊ずつ持ち活動のすべてを記録する「イヨボヤノート」。自ら課題を設定し解決に向けて思考した軌跡を振り返り、自分自身と社会を結びつけ、おのおのの進路実現につなげていくためのツールだ。 新潟県立村上高校は創立120年を迎えようとする伝統校。地域からの信頼は篤く進学実績にも定評がある。しかし最近は学力の高い生徒が都市部に流出する傾向が強まり、例えば難関校受験にチャレンジするような生徒が減少しているそうだ。志の高い生徒、同校を第1希望とする生徒にもっと入学してもらい、学校を活性化させ、地域により貢献できるような存在となりたいという思いを抱えていた。 「生徒たちは真面目である反面、おとなしく消極的なところがあります。彼らに判断力や行動力を付けてもらいたい」と言うのは進路指導主事の伊藤 喬先生。また1学年の担任の田島甲太先生は「本校の生徒には答えが複数あるような問いは苦手という傾向があります。生徒たちがもっと思考するようになるためにはどうすれば良いか常に考えています」と言う。 さらに新学力観に基づく指導という課題も抱え、効果的なキャリア教育を実施したいと考えたとき、伝統校ならではの同窓リソースをもっと積極的に活用するべきではという考えに至った。外部の協力を得ながら地域の課題に取り組む探究活動を「イヨボヤ※プラン」と名付け1学年から2学年にかけて継続して実施。この取り組みを3学年に、そして個々の進路実現へもつなげていくために、学校をあげて走り出している。※イヨボヤとは村上名産の「鮭」のことを指す言葉村上高校(新潟・県立)取材・文/永井ミカ大学進学107人、短大進学10人、専各進学44人、就職7人、その他9人大学進学者は毎年100名を超え、そのうち20名前後が国公立大学。ここ数年、数字は大きく変わっていない。難関校にチャレンジする志の高い生徒を増やし、進学実績を上げたい考え。1900年創立/普通科/生徒数521人(男子268人・女子253人)個別の取り組みの意味や取り組み間のつながりを意識左から進路指導部 木山美奈子先生校長 関矢和彦先生進路指導主事 伊藤 喬先生進路指導部 田島甲太先生432019 FEB. Vol.426

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