キャリアガイダンスVol.426
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という学校もあり、探究学習の本質を追究する姿勢が感じられる。 「多面的評価」、「カリキュラム・マネジメント」はどちらも6%とまだ少数ではあるが、先行して改革を進めている学校の内容を見ると、「多面的評価」はルーブリック活用、観点別評価の導入や研究という事例が多い。「カリキュラム・マネジメント」は、半数はSGHやSSH、都道府県の指定校など何らかの指定を受けており、先行研究事例としての役割を担っているようだ。また学校全体の組織横断のテーマであることから、教員全体を巻き込んで動いている様子がうかがえる。● 今回の結果からは、「学習指導要領の改訂」という重要な節目に向けて、各学校がさまざまな困難を感じながらも前向きに取り組んでいる様子が明らかになった。目の前の生徒たちが生き抜かねばならない「変化の激しい不確実な未来」に想いを馳せながら、今、教師としてできることに心を砕いている先生方の推進力で、教育改革は少しずつ前進している。そんな兆しが感じられる調査となった。調査の詳細については、リクルート進学総研のホームページにて確認いただきたい。 最近1〜2年の間、自校で力を入れて改革した取り組みを挙げてもらった。今回は特に新学習指導要領に関連の深い取り組みを紹介したい(フリーコメント2)。 「授業力向上」に力を入れている学校は44%(グラフは割愛。以下同)。Wi-Fi、電子黒板、タブレットなどのICT環境の整備に合わせた改革や、アクティブラーニング型授業を推進しながら改革を進めている事例が多く見られた。また、授業見学と相互評価、教員研修の実施を行っている学校も多く、多忙ななかでも機会を作って研鑽を積んでいる。 「キャリア教育」の改革に力を入れている学校は34%。体験学習の強化、地域連携、外部連携、探究学習と絡めて改革している事例などが多い。 「探究学習」も24%と多く挙げられた。SSHやSGHの指定を受けていない普通科の高校でも、「総合的な学習の時間」のカリキュラムに1年次から導入を始めるなどの事例が散見された。「単なる調べ学習に終わらせたくない」新学習指導要領につながる改革は既に進行中学校改革の取り組み「授業力向上」44%、「キャリア教育」34%、「探究学習」24%で改革中学校改革の具体的な取り組み内容「高校教育改革に関する調査2018」(第20回 「高校の進路指導・キャリア教育に関する調査」)● 調査対象:全国の全日制高校4,703校● 調査期間:2018年10月5日(金)~2018年10月27日(土)投函締切 ※2018年10月31日(水)到着分までを集計対象とした● 調査方法:質問紙による郵送法● 集計対象数:1,203校(回収率25.6%)〈回答者プロフィール〉● 設置者別 国立2校(0.2%) 都道府県立829校(68.9%) 市町村区立42校(3.5%) 私立312校(25.9%) 無回答18校(1.5%)● 高校タイプ別 普通科935校(77.7%) 総合学科(移行中含む)79校(6.6%) 専門高校165校(13.7%) 無回答24校(2.0%)● 地域区分別 北海道100校(8.3%) 東北104校(8.6%) 北関東・甲信越155校(12.9%) 南関東223校(18.5%) 東海149校(12.4%) 北陸34校(2.8%) 関西141校(11.7%) 中国・四国141校(11.7%) 九州・沖縄138校(11.5%) 無回答18校(1.5%)● 校務分掌別 管理職255校(21.2%) 進路指導部818校(68.0%) その他181校(15.0%)無回答24校(2.0%) ※複数部署による回答校あり調査概要〈授業力向上〉●「アクティブラーニングの視点」による学習指導のなかで、予習や授業のなかで得た知識を出力する場面や、対話のなかで気付き合い、ひらめき合う場面としてのペアワークやグループワーク、発表(プレゼンテーション)やディベートなどを多用することによって、「主体的・対話的で深い学び」を実現し「課題を発見し解決するために必要な自ら主体的に学び続ける力」(=「自学力」)を育むことを目指している(神奈川県/県立/普通科)●評価・批評型の校内研修・研究ではなく、対話型の授業研究を行っている(東京都/私立/普通科)●ICT利活用の点から、BYOD(Bring Your Own Device)をシステム導入、授業内容の改善について研究を進めている。それに伴い、教科の枠を超えて授業力の向上を図るための研修を行い、徐々に成果をあげてきている(神奈川県/県立/普通科)〈キャリア教育〉●地域連携・学校間連携のなかで、大人と交流し、主体的に参画する姿勢と能力の向上を意識してきた(岡山県/県立/普通科)●学校の教育活動全体を通じてキャリア教育を行う。地域のなかでの自分、地域の中での学校を意識して外部連携に取り組む(三重県/県立/専門高校)〈探究学習〉●総合的な学習の時間に、今年度の1年生から探究学習を実施。SDGsの視点から地域の企業と連携して取り組んでいる(石川県/県立/普通科)●産能大の協力を得ながら、主体的学習者、協働的学習者の育成プログラムを始めた(沖縄県/県立/普通科)●系列ごとの学習で、それぞれの系列の特色を出したり、連携したりしながら、探究学習を進めている。また、そのなかで日本語学校の生徒や地域の子ども・老人・商店街、大学等と協力した授業も行っている(静岡県/県立/総合学科)〈多面的評価〉●観点別評価をより実効的なものとするため、シラバスの活用を一層進めている(奈良県/県立/普通科)●ルーブリック評価表を作成(東京都/私立/普通科)〈カリキュラム・マネジメント〉●全職員からの学校に対する提言をもとに、カリマネ、およびキャリア教育プログラムの再構築を全職員によるプロジェクトにて検討中(佐賀県/県立/総合学科)●目指す生徒像、グランドデザインの策定。その実現のための、コンピテンシーの具体化(10個)とその提示(学びの三つの柱との整合性、校訓との親和性、定義づけ)。コンピテンシー(資質・能力)を付けるための4つのステップを策定、到達段階を定義し、その段階を意識した方法を考え、行事・授業のあり方(手段)を改善する。その到達度を認知するためのルーブリックの作成(青森県/県立/普通科)フリーコメント2「高校教育改革に関する調査2018」結果詳細は、リクルート進学総研サイト(http://souken.shingakunet.com/research/)でご欄いただけます。542019 FEB. Vol.426

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