キャリアガイダンスVol.426
56/68
市立札幌開成中等教育学校は、「探究」に重点を置く、札幌市立初の中等教育学校だ。キャリア教育においても、自ら将来を探究していくためのユニークな実践を行っている。その詳細に入る前に、基盤となる学校全体の成り立ちから紹介していきたい。 同校は2015年度、「6年間の連続した学びを生かして、札幌で学んだというアイデンティティを持ちながら、将来の札幌や日本を支え国際社会で活躍する、知・徳・体のバランスのとれた自立した札幌人」の育成を掲げる中等教育学校として誕生した。前身校である札幌開成高校の伝統やSSH、SGHの事業を引き継ぐ一方で、新しい市立学校の一つのモデルを示すというミッションをもち、先進的な手法や革新的な発想を取り入れながら学校づくりに当たっている。 学校教育目標には、「自ら課題を発見し生涯にわたって学び続ける力」「自己を肯定し多様な価値観を認め合う心の余裕」「未知なるものに挑戦し自ら道を切り拓く勇気」を大切にする「生徒のすがた」とともに、それを支える教職員や保護者などの「大人のすがた」も設定している(図1)。同校に立ち上げから関わる校長の相沢克明先生はこう語る。 「目指す生徒像に向けて教職員が引っ張るのではなく、あくまで生徒自身が『生徒のすがた』に向けて主体的に資質・6年間の学びの連続性のなか存分に探究できる学校主体性を重視したキャリアデザインプログラム能力を伸ばしていく。そのための環境整備を、教職員をはじめとする私たち大人が推進していく。そのことを生徒、保護者、教職員で常に意識できるよう、学校教育目標として掲げています」 学校教育目標実現に向けた具体策の核が「探究」だ。6年間を基礎期・充実期・発展期の3つに区分し、段階に合わせて課題探究的な学習を確実に推進するツールとして、IB(国際バカロレア)を導入(図2)。すべての授業において、「探究-行動-振り返り」が双方向に展開するIBの学習サイクルを取り入れた実践を目指している。 また、授業は50分×2コマ(連続)を1セッションとした日課時程を編成。探究型の授業にじっくり取り組めるようにしている。 「例えば理科では、教員の指示どおりに実験するのではなく、生徒自身が考えながら取り組む余裕ができました」(進路指導主事・杉渕宏志先生) さらに、昼食時間後の50分間は、生徒の自主的な活動のための時間「コズモタイム」として設定。何をしていても自由だが、集まって探究活動を行う生徒の姿もあちこちに見られる(左ページ写真)。 「高校受験に追われないゆとりある6年間のなかで、生徒がやりたいことを見つけて存分に探究し、力を伸ばせる学校を目指しています」(相沢校長) 同校のキャリア教育は、このような主探究を軸とする学校づくりを掲げて開校し、新しい学校づくりの最中にある市立札幌開成中等教育学校。未来社会を見据えたキャリア教育にも力を入れ、各教員の自由な発想でさまざまな活動を立ち上げてきました。そのなかで育ち、2018年春に初の卒業生となった1期生は、どんな力を身に付けて巣立ったのでしょうか。取材・文/藤崎雅子先進校に学ぶキャリア教育の実践6年間一貫教育 探究 IB(国際バカロレア) 地域連携市立札幌開成中等教育学校(北海道・市立)探究を重視した多彩な実践を通じて自ら将来をデザインしていく主体性を育む562019 FEB. Vol.426
元のページ
../index.html#56