キャリアガイダンスVol.426
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任と保護者に対して行う「自分プレゼン」だ。各学年が設定する「将来の夢・成績と学習計画の現状分析」「英語で自身のことや将来の展望を語る」などのテーマについて、情報科などと連携して各自が作成した資料を用いながら、生徒が自分の言葉で語る。生徒は自ら語ることで進路に対する意識を高める。保護者からは、子どもの考えやプレゼンする姿に感激したという声が多くあがるという。 18年春、同校で初めての卒業生として1期生が巣立った。3年間担任を務めた黒井先生は、1期生の成長について「特に主体性やチーム力で物事を前に進める力が育った」という。 それを象徴するのが、3学年のクラス編成を生徒自身の手で行ったことだ。学校側が出した条件は「各クラス・学年全体がしっかり学校生活を送れる状態にする」のみ。男女比や成績バランスも問わず、生徒に任せた。ボードの希望クラス欄に自分の名前カードを貼ることで意思表示するという方式で、2週間の期間内は名前カードの貼り替えも可能。生徒間の相談や調整を行いながら、最終的に日々の授業や学校行事への影響も考慮されたクラス編成ができ上がった。 「大事にしたかったのは、『自分で決めた場所でがんばろう』という主体的な姿勢です。初期にはなかったアイデアですが、生徒の成長していく姿を見て、『この生徒たちだったらクラス編成を任せられる』と考え、SELFの集大成として実施することを決めました。思い切って実施してみて、生徒の意識が一段上がったように感じました」(黒井先生) 進路選択の場面では、前身校時代とは異なる傾向が見られた。例えば、これまで工学部・理学部に集中していた理系の進学先に農業系が増えるなど、進路分野が多様化しており、取り組んだ探究テーマとの連動も見られる。探究の経験は、国公立大学を含めたAO入試利用にも活かされ、進路実績を押し上げた。また、海外大学進学者が5人あり、グローバル人材の育成に力を入れてきた影響がうかがえる。 2年後の開校6年目で、中等教育学校としての完成年度を迎える同校。節目に向けて学校づくりを続けていくなか、相沢校長は教員からの自主的な提案をできる限り応援していく方針だ。また、それを可能とするための、業務の整理や効率化などの環境整備にも一層力を入れていくという。 「教員が上から言われたことを無理しながら取り組んで、新しい学校のプログラムや体制の形が完成しても、それで目指す生徒を本当に育てることができるでしょうか。生徒が将来、幸せに生きていくためには、学び続ける力が必要です。生徒が〝学ぶことは楽しい〞と思えるよう、教職員一人ひとりが、主体的に変革や新しい挑戦を楽しんでいる学校にしていきたいと考えています」(相沢校長)校長相沢克明先生進路支援チーム黒井 憲先生生徒自身の手でクラス編成を実施※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.426)進路指導主事杉渕宏志先生「何の仕事をするか」から「その仕事で何をするか」へ選択科目「キャリア・ライフ・デザイン」の活動●小さいころから食に興味があって、将来は管理栄養士を目指しています。食べることは体づくりの基本です。みんなにちゃんとしたものを食べてほしいですが、今、忙しい共働き家庭が増えているなか、単に「インスタント食品はダメ」と言うだけでは改善されないでしょう。だから、食を通した家族の在り方や、インスタントを上手に活用した食生活が提案できる管理栄養士になれたらと思っています。 そんなふうに将来を具体的に考えられるようになったのは、2年連続で参加している「アニマドーレ」の影響が大きいです。農業体験やお弁当開発に取り組むなかで、食や農業の大切さや問題点について知識として知るだけでなく本当に「わかった」気がします。また、私たち高校生の力はすごい、とも実感しました。「アニマドーレ」の活動をもっと広げ、高校生のパワーでいろんな人に食の大切さを伝えていきたいです。(5学年・植村 晴さん/写真左)●私は以前、人と接するのが得意ではありませんでした。昨年度、軽い気持ちで参加した「TEDx」のプログラムでも、他校生と思うように会話が続けられず、ふがいなさを感じました。こんな自分のまま大人になりたくない。だから、いろんな事に挑戦してみようと、今年度の「TEDx」では大人や大学生に交じって運営スタッフもやってみました。いろんな人と出会い、コミュニケーションの面白さに気付き、成長できたと感じています。そんな私が先日の「TEDxSapporoSalon」で発表したテーマは「人とのつながり」です。自分の経験を基に、皆さんも勇気を出して人とつながってみませんか?とお話ししました。 将来の目標は、理学療法士と柔道整復師の2つの資格を取得することです。北海道胆振東部地震をきっかけに、このような災害発生時に両方の仕事ができれば、より人の役に立てると考えたからです。患者さんに不安な気持ちも吐き出してもらえ、心のケアもできる医療人になりたいと思っています。(5学年・柴田 絢さん/写真右)アニマドーレ・プロジェクトでは、農業体験するだけではなく、地元農家の支援につながるさまざまな活動に取り組む。「TEDxSapporoSalon」でプレゼンを行う生徒。自分の経験の振り返りから始め、約5カ月間かけて準備してきた。生活・身体・心・学習の状況や、悩み、進学希望先などを生徒が記入。面談を担当した教員は、下欄に面談内容を記録する。図5 面談カルテ592019 FEB. Vol.426

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