キャリアガイダンスVol.426
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 そんななか、東日本大震災が起こりました。たくさんの悲しいことがありました。東京でニュースを見ていたカタリバは、いてもたってもいられず東北へ向かいました。初めは街頭募金で集めた寄付金を預けて帰ってくるつもりでしたが、甘かった。すべてを津波に奪われ、居場所を失った子どもたちを目の当たりにして、運命は変わりました。東北に居を移し、腰を据えて活動することに決めたのです。 宮城県女川町、岩手県大槌町で行政と連携し、被災地の放課後学校「コラボ・スクール」を開きました。あれから8年間が経ちますが、今夜も変わらず明かりを灯し続けています。 復興の道のりは並大抵ではありませんでしたが、希望がありました。それは高校生です。 全国高校生マイプロジェクト事務局を運営しているのは、認定NPO法人カタリバ。「意欲と創造性をすべての10代へ」というミッションをかかげ全国で活動する教育NPOです。 「全国高校生マイプロジェクトアワード」が始まったのは2013年のことですが、そもそもマイプロジェクトは2005年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの井上英之研究会で生まれた手法です。僕は2009年に井上さんと出会い、時に政府の会議で、時にシアトルで、時に街角のカフェで教えを受けました。マイプロジェクトについて語る井上さんは、いつも自由で魅力的でした。 私たちがマイプロジェクトを提唱してから6年になりますが、もちろん、肯定的な声ばかりではありません。 「そんなの、うちの生徒には無理!」 「どうやって地域と連携するの?」 「先生方は忙しいから…」 それでも全国にマイプロジェクトが広がっている背景には、「やらされ探究」「操りアクティブラーニング」「お飾りPBL」の拡散に問題意識をもつ、熱い熱い熱い先生方の伴走があります。 ちょうど本号が全国に届いているこの季節は、第6回「全国高校生マイプロジェクトアワード」まっただなか。「きみだけのドラマを語れ」という募集メッセージに、全国250校の先生方が3000人の高校生を送り出してくださいました。時代の変化を感じずにはいられません。 皆さんは「全国高校生マイプロジェクト」をご存知でしょうか? 高校生が地域や身の回りの課題や気になることをテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行することを通じて学ぶ探究型学習プログラムです。 PBL(Project Based Learning)や探究型学習といえば、探究課題が用意されているプログラムが多いかもしれませんが、マイプロジェクトではテーマ設定に対する「主体性」を大切にしています。また、たとえ小さくても実際に「アクションを起こす」ことで、社会に揉まれ試行錯誤するなかから大きな学びが生まれます。認定NPO法人カタリバマネージングディレクター今村 亮1982年熊本市生まれ。東京都立大学卒。学生時代にNPOカタリバに参画し、凸版印刷を経て、2010年より現職。カタリ場事業、中高生の秘密基地b-lab、コラボ・スクールましき夢創塾を立ち上げる。文部科学省熟議協働員、岐阜県教育ビジョン検討委員会委員を歴任。2019年現在、全国高校生マイプロジェクト事務局長。熊本大学・慶應義塾大学にて非常勤講師を兼務。共著『本気の教育改革論』(学事出版)。「やらされ探究」を「自分ごと化」する高校生が支援される側から支援する側へ文部科学大臣表彰をかけて、全国250校の高校生が出場する「全国高校生マイプロジェクトアワード」をご存知でしょうか。探究型学習に取り組む高校生がそのアクションを競うイベントです。今号より約1年間にわたってお届けする連載では、高校生の取り組みがどんな未来を生み出したのか、マイプロジェクトが大切にする価値と共に、実例を紹介していきます。602019 FEB. Vol.426

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