キャリアガイダンスVol.426
61/68
3.11を教訓に防災活動に取り組んだ岩手県大槌町の高校生たち(2013年3月)スタートアップキャンプの様子(2017年10月)と天文をテーマにしたナイトツアー。4年に一度みんなで建て替える復興木碑。伝統の手踊りの継承など…。高校生たちが汗をかく姿に、大人たちの心にも本気の火が灯り始めました。 不思議なことに、自分たちで何かを始めようという高校生の変化は同時多発的に起きました。気仙沼でも、石巻でも、宮古でも、南相馬でも、いわきでも、女川でも。 彼らが地域を越えて出会い、交流する場が必要だと、企画されたのが第1回「全国高校生マイプロジェクトアワード」でした。学生時代からの恩師である鈴木寛さんに実行委員長をお引き受けいただき、「全国」と仰々しく銘打ってはみたものの、そんなちっぽけなイベント、当時は誰も知りません。結果的に集まった高校生はたった18人でした。 2012年のある日、カタリバ東北事業ディレクター・菅野祐太が、井上英之さんを大槌町に招きました。瓦礫が片づき、さら地になってしまった町で、先の見えない復興議論が続いていた時期です。大槌町で井上さんは高校生と語りました。すると彼らはぽろぽろと涙を流しながら、あの日から今日まで誰にも言えずかかえてきた想いを言葉にしました「自分たちも何かしたい」と。その涙がきっかけとなりました。高校生は大槌町の復興のためにマイプロジェクトを始めました。 高校生の取組は思った以上に多彩でした。大槌町を被災地から星空の町へ、 しかしこの18人が素晴らしかったのです!高校生だって社会を変えることができる、誰もがそう信じられるアワードでした。私たちはこのアワードを本気で「全国」の運動にしよう、と固く決意しました。 そこで始まったのが「マイプロジェクトスタートアップキャンプ」でした。どんな環境にある高校生でもマイプロジェクトを始められるよう、きっかけを手にする場が全国に必要です。自分の課題意識を掘り下げ、プロジェクトのプランを作る鎌倉での合宿から始まって、東京・東北・九州・関西・北海道・オンラインへと拡がりました。 さらには「マイプロジェクトを取り入れたい」という要望を受け、学校・自治体への支援が始まりました。プログラムの提供やマイプロジェクトアワードの出張実施などの支援先は、川崎市、気仙沼市、雲南市。そしてふたば未来学園高校(福島・県立)、N高校(広域通信制・私立)、郁文館高校(東京・私立)と続いています。 この流れを大きく後押ししたのは文部科学省でした。高校の新しい学習指導要領に「探究」が位置づけられたことで、マイプロジェクトの目指す未来と国の方針が、不思議な偶然で合致し始めました。2015年のアワードからは、文部科学省の後援を得て、グランプリに文部科学大臣表彰を行うことに。そして第6回目となるアワードが始まりました。2020年までに、全国1万人、そして高校生の1%となる3万人の高校生がマイプロジェクトに取り組む未来を目指しています。そこには一つひとつのドラマがあります。 マイプロジェクトを通して、生徒はいかにして探究のテーマを「自分ごと化」したのでしょうか? そして先生はどのように向き合い伴走したのでしょうか? また、取り組んだ高校生は卒業後、どのように活躍しているのでしょうか? これから1年間、全国の現場から高校生と先生のドラマをお届けします。高校生が地域や身の回りの課題や気になることをテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行することを通じて学ぶ探究型学習プログラムです。マイプロジェクトでは、プロジェクトのテーマ設定に対する「主体性」と、たとえ小さくても実際に「アクションを起こす」ことを大切にしています。https://myprojects.jp/アワード2017集合写真(2018年3月)たった18人のための第1回全国アワード18名の高校生のため初開催した全国高校生マイプロジェクトアワード2013(2013年12月)612019 FEB. Vol.426
元のページ
../index.html#61