キャリアガイダンスVol.426
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 大学入試改革を見据え、新学力観に基づく指導力を入れている新庄南高校。特に、「新庄市を持続可能な地域にする」という課題に取り組む探究活動は、希望進路の分野(観光、保育、医療・福祉など)別に行っており、生徒が自分の将来と地域の課題を結びつけながら生き生きと学ぶ姿が見られる。「本来、地元への愛着が強く元気で活発な生徒たち」と言うのは2学年の大竹大介先生。フィールドワークも積極的に取り入れた地域学習型の探究活動は同校の生徒にうまくマッチした。 一方で、総合的な学習の時間における進路学習の時間がなかなかとれないという弊害も生まれた。推薦・AO入試による進学が多い同校としては、探究活動の時間は十分に確保したい。しかしそこに時間をかけたことで、学校調べやガイダンスという具体的な進路実現に向けた学びの時間が減ってしまったのだ。 そこで進路学習のメイン教材として活用することにしたのがスタディサプリ進路。ワークシートや進路講演なども付属するため、効率的に進路学習が進められる。まずは1年生の2月に『未来事典』と『仕事・学問BOOK』を配付。働くことについて各々がイメージできることを目指した。続いて2年生の4月に『進学事典』を配付し適性診断を実施。その後、『学校&学部研究BOOK』『分野選びBOOK』『志望理由・小論文BOOK』を順次配付した。 なかでも最も活用しているのは、多くの学校が載っている『進学事典』。付属する学校詳細比較ワークシートは、興味のある学校について生徒自身が詳しく調べ記入できる仕組みになっている。夏休み前の全体会で使い方を説明し、夏休み中に最低2校は調べて記入することという課題を出した。2学期からは生徒が記入したシートを面談などで活用している。 「シートがあることによって、学校選びで何を軸にしているのか、進学後の将来をどう考えているのかなど、限られた時間内で効率的に深い話ができるようになりました」と大竹先生。じっくり考える時間があったためか、今年度の2学年は例年より志望校を絞り込む時期が早いそうだ。またオープンキャンパスへの参加率も増加。ミスマッチの減少にも期待がもてるという。 こうして把握した進路を探究活動のグループ分けやテーマにも活かし、進路学習と探究学習の両輪がバランスよく回り始めた。「点数をとるための勉強ではなく、将来こうなりたいという自分をイメージして勉強してほしいし、そんな生徒が増えてきたように感じます」と、2学年担任の堀江克人先生は言う。 ワークシートは単発ではなく継続的に活用。志望が変われば新たに学校を調べる。なぜ変わったか、どう変わったかを先生とじっくり話す。「ワークシートに記入することで自分の考えを整理できる。この先に取り組む志望理由書のワークシートにも期待しています」(大竹先生)探究活動に時間をとられ従来どおりの進路学習の時間を確保できない課題学校詳細比較シートを継続的に活用しながら具体的な行動を促す活用 進路選択  ワークシート  面談  探究との連動【活用キーワード】1914年創立/普通科・総合ビジネス科/生徒数390人(男子120人・女子270人)/進路状況(2018年3月実績)大学進学47人、短大進学27人、専各進学43人、就職35人、その他1人スタディサプリ進路『進学事典』と付属の学校詳細比較シートを使った2年生の面談の工夫リクルートサービスを活用した実践事例【進路】取材・文/永井ミカワークシートを面談などでも徹底活用把握した進路と探究活動を連動させる新庄南高校(山形・県立)写真右から2学年・進路担当大竹大介先生2学年・教務担当堀江克人先生『進学事典』や各学校から取り寄せたパンフレット、学校ホームページなどを見ながら、各項目に沿ってワークシートに記入する。行きたい学校、興味がある学校など最低2校が夏休みの課題。声掛けの工夫・ 志望校が夏休みから変わっていない生徒→具体的に何をするべきかを話し合う。・ 課題の2校は書いたものの将来に対して迷っている生徒→焦らなくていいことを伝え、職業まで思い至らなくても興味のある分野で学校選びをしていいとアドバイスする。・ 志望校が変わっている生徒→なぜ変わったのか、どう変わったのか話をじっくり聴く。就職希望者は『進学事典』を使わないが、進学希望者と同様に自分の進路を見つめてほしいとの思いから、進学者用の『分野選びBOOK』に付属する分野研究ワークシートに記入してもらっている。興味のある分野から学問や仕事を探すためのシートで、高校の科目とのつながりも考えられるので、今後の高校生活の課題発見にもなる。これにより、進学、就職にかかわらず全員で進路学習に取り組むことができる。▶初年度納入金堀江先生「お金の項目があると、『これについて保護者の方と話はできた?』などとさり気なくたずねることができます」▶もっと知りたいこと/明らかにしたいこと大竹先生「最後にこの項目があることによって、面談で次の行動を促せます」●夏休み中にシートに記入●2学期の面談でシートを活用●ワークシート中の注目すべき項目例●就職希望者には別のワークシートを632019 FEB. Vol.426

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