キャリアガイダンスVol.427
10/66
黒瀬 大人数での話し合いでは、沈黙することも多いので、研修会のスタイルを分科会方式に変えました。KJ法などで対話量を増やすような仕掛けをしたところ、活発かつ焦点化した意見が出るようになりました。杉山 本校も、対話を意識した研修を自前で始めています。グループワークだと意見が出やすいので、各部署では盛り上がってきたのですが、いざ職員会議になると消極的になるのが課題です。黒瀬 自分の意見を表明すると思うと腰が引けますよね。うちは、授業改善の取り組みとして以前から授業にも少人数での話し合いを取り入れているんです。その際、「グループ内で遠慮なく言い合って、出てきた意見を代表者が発表しましょう」と言うと、他人から出てきた意見だから、ある意味で無責任に堂々と発表できる。そんなことを続けていたらクラスの雰囲気が良くなってきました。杉山 いいヒントをもらえた気がします。集団で何かを決めるとき、一人ひとりの中では、ある程度決まった意見があるはずです。問題は、それを出しやすい場づくりですね。黒瀬 うちは若い先生が積極的。研修で得たものをすぐ実践に移し、共有してくれます。若い人が誇らしげにやっているから、ベテランも負けてはいけないという気にもなるんです。―多くのヒントが出てきましたが、改めて「決められない」生徒に対して、学校や先生ができることは?黒瀬 キャリア教育を充実させるにつれ、将来を真剣に考える生徒が増えてきた気がします。こんな3年生もいました。「私は何がしたいのかわかりません。だから総合的な学習の時間のテーマは『私のキャリア教育』にします」と。そんな課題を選んだ生徒は初めてでしたから、いろいろと助言したところ、徹底的に適性検査や職業調べを行い、課題学習に取り組んだ結果、確固たる目標にたどりついたんです。この生徒のようにPBLや探究学習に取り組むことで、自分がしたいことに気づき、道を切り開くきっかけが生まれるかもしれません。宮永 教科でもキャリア教育はできます。中学校の技術の授業で、自分が気になっている事柄を調べ、意見をまとめてもらったことがあります。身近なことが、さまざまな学問や職業に繋がっているのだと気づくことが目的でしたが、ゲームへの興味から、プログラミングやマーケティング、ITビジネスに関心が広がっていくなど、有意義な授業になりました。高校も同様で、授業・HRともにグループワークのチーム分けを工夫することで化学変化が起き、一気に輝く生徒が出ることも珍しくありません。杉山 外部人材の活用も効果的。以前は、教室に外部の人を入れることをはばかる空気がありましたが、最近は歓迎されています。それに今、ファシリテーターとかコーディネーターなど教員の役割が増えていますよね。すべての役割を果たそうとしたら負担ですが、チーム学校というように、学校には多くの教職員、関係者がいます。だから自分が不得意なことは任せたらいい。そう思うようにしたら気がラクになりました。教職員同士が多様性を認め合うようになれば、生徒も、皆で決められるようになるはずです。林 多様性という点では、生徒の価値観が広がっているわけですから、できる範囲で、個人面談の時間を確保したいです。1対1の対話の場合、教師の問いに答える必要があるため、「じっくり考えたことはなかったけど、本当の自分はどうだろう」と、自分との対話が生じることもあるので、そこを意識して面談しています。杉山 先日、卒業生にこう指摘されはやし・いたる●担当教科は理科(物理)。企画研修部では、総合的な学習の時間のほか、学校行事、校内研修を企画。女子バレーボール部顧問。高1担任。「本校には9年間勤務していますが、幸い8年間、ホームルーム担任をさせていただいています」高知追手前高校(高知・県立)林 格先生人との対話はもちろん大切。それ以上に、自分自身との対話も大切学校や教員ができることとは?テーマ3
元のページ
../index.html#10