キャリアガイダンスVol.427
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第4次産業革命と呼ばれる現代。劇変する社会の変化に対応するために、企業も必死で変わろうとしています。企業の経営者や管理職、働く人々は、社会の変化とどう向き合っているのかを、人材育成や組織マネジメントに取り組んでいる兼清俊光氏に語っていただきました。 実業界ではG*AFAと呼ばれる2000年前後に生まれた企業などが、世界企業の時価総額ランキングの上位を占め、歴史ある企業を超えています。社会変化のスピードは、このような世の中の実情を見れば明らかです。 さらに加速が予想される今後の変化に対応するため、「計画を立てることが失敗をはらむ」としているGoogle社のように、確定事項を「決める」より、仮説を立ててアクションしながら学んで、先に進む経営が求められています。 こうした新しい時代を表すキーワードが「Agile(アジャイル)」です(図1)。組織においては「早く失敗し」「早く学び」「早く成長する」という意味で使われています。 不確実な現代はVUCAワールドと呼ばれていますが、アメリカではさらに進んで、既存の価値基準を打ち砕く「Disruptive World」と言われています。「未来は予測できない」「未来は創るもの」「未来を創れる組織と人への変容が求められる」のが今の世の中なのです。Agileが成長への近道で、失敗を恐れずにチャレンジし、失敗してもそこから学んで次の仮説を立てていくことです。それは企業だけでなく教育現場も同様ではないでしょうか。 今の社会における課題は、過去の延長線で物事を判断できず、誰にも正解がわかりません。だから企業は変わり続けることが求められていきます。正解のない世の中で、進路選択など自分の進む道を探すのは大変なことです。「これだ」と決めつけるのではなく、やってみたいことのビジョンから、今の自分がチャレンジしたいこと、関心があることを見つけて、仮説を立てて臨むことが大切だと思います。仮説に基づいて学んでみて、違っていたら方向転換すればいいのです。成長すると見える世界が変わるので、ビジョンも変わります。また次の仮説を立ててチャレンジすればいい。それを繰り返すために生予測できない未来は創るもの早く失敗して早く学べばよいAgile(アジャイル)とは図1「Agile」は直訳すると「機敏な、素早い」。IT業界で「素早いソフト開発」などとして使われてきた言葉だ。*GAFA=アメリカの大手IT企業Google、Apple、Facebook、Amazonの総称。2つのマインドセットの違い図2マインドセットの違いは個人差ではなく、同じ人でも置かれる環境や立場によって異なってくる。取材・文/長島佳子「決める」内容に正否はない。チャレンジから何を学んだかが本質1991年よりヒューマンバリューにおいて、人々・組織・社会の「より良い未来」に向けて、人材開発と組織変革の潮流を踏まえつつ、現場の知識・経験を取り入れ、クライアントとの協働的なアプローチによって変革プロセスをデザイン・実行。大規模組織の全社変革をはじめ、多くの組織の変革を支援。またコンサルタントやファシリテーター、実践家を対象者に学び合いを実践している。株式会社ヒューマンバリュー代表取締役社長兼清俊光実社会はチャレンジの連続「決める」の概念も変化している生徒たちが将来羽ばたく社会は、企業でも行政でも、何かを「決めて」それを実践することの連続です。自らの意思をもち、多様な考え方と出合いながらのチャレンジが求められています。組織変革や合意形成の専門家に、社会で必要となる「決め方」についてお話を伺いました。122019 MAY Vol.427

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