キャリアガイダンスVol.427
18/66
私は、高校生の能力が昔より劣ってきたとは思いません。むしろ行動力などは、私の高校時代より遥かにあると感じています。特に、東日本大震災以降、自然災害や地域課題に対して行動を起こし、社会に影響を与える若者は間違いなく増えています。 高校現場から、「進路選択・決定能力の不足」(9ページ)という課題感があがっていますが、それも、高校生の「決める」力が劣ってきたのではなく、それ以上に社会の変数が増し、進路を決めにくい状態になってきたことが理由だと考えています。 入試は多様化し、海外留学も一般的に。大学進学率があがるなか学ぶ意義も問われています。しかも、10年後どうなっているかさえ予想もつかない、揺らぎの大きい社会であることを高校生は肌で感じています。なのに、「少しでも偏差値の高い大学に」という考えのままの保護者もいれば、「そんなことではAIに職を奪われるぞ」と極端な脅し方をする大人もいます。こうした状況は、若者にとって酷と言えなくもありません。しかしながら、時代の変化に伴い、新たな課題に直面するのは避けられないこと。今の高校生に優れた面があるとしても、社会の要請や期待がその先にあるのだから、変化に向き合っていくことはどうしても必要です。 かつて、「女は結婚や出産を機に家庭に入るもの。男は家族のために外で働くもの」という、同調圧力的な空決める力が劣ってきたのではなく社会の変数が増してきた取材・文/堀水潤一 撮影/平山 諭自分で決める、他者と決めて実践する。そのプロセスを学ぶ場が「特別活動」「高校生が『決める』プロセスを学ぶ場は、学校の中にたくさん存在します。その時間を活用しないのは本当にもったいないことです」。そう語るのは、文部科学省でキャリア教育および特別活動担当の調査官などを務めてきた筑波大学の藤田晃之教授。新学習指導要領で、キャリア教育の要と位置づけられた特別活動の意義について伺いました。筑波大学 人間系 教授藤田晃之ふじた・てるゆき●1963年生まれ。筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。筑波大学教育学系助教授、同大学院博士課程人間総合科学研究科准教授などを経て、2008年文部科学省 国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター総括研究官。同省 初等中等教育局 児童生徒課 生徒指導調査官(キャリア教育担当)および同局教育課程課 教科調査官(特別活動担当)を併任。13年4月より現職。182019 MAY Vol.427
元のページ
../index.html#18