キャリアガイダンスVol.427
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共に生活や学習に取り組む生徒で構成される集団である「ホームルーム」において行われる活動。ホームルーム活動全校の生徒をもって組織する生徒会において、学校における自分たちの生活の充実・発展や学校生活の改善・向上を目指すために、生徒の立場から自発的、自治的に行われる活動。 生徒会活動全校若しくは学年又はそれらに準ずる集団を単位として行われる活動。学校行事※文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 特別活動編」より集団の中で、現在及び将来の自己の生活の課題を発見し、よりよく改善しようとする視点。自己実現集団の中で、人間関係を自主的、実践的によりよいものへと形成するという視点。人間関係形成集団や社会に参画し様々な問題を主体的に解決しようとするという視点。社会参画※文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 特別活動編」より特別活動を構成する「2つの活動」と「学校行事」図1気がありました。そんな時代に、男性中心の職場で働く女性は、いかに窮屈な思いをしてきたか。また逆に、私などは大学院生時代に子どもを授かったため、働く妻との間で家事を分担し平日に幼児を抱えてスーパーに行くことも多かったのですが、誘拐犯でも見るような視線を感じることもありました(笑)。それが今、固定化された男女の役割は次第に薄れ、理系や土木関係など男性優位と考えられてきた分野に女性が進出し、反対に男性の保育士や看護師も珍しくなくなりました。男女双方にとって進路の選択肢が増えたことになります。人々の感受性が増し、さまざまな方面で、多様な選択を許容する社会になりつつあるわけです。ですから、絶対の正解がないとはいえ、無数の選択肢から迷いながらも自らの生き方を決められることは幸せなことだと思います。 いずれにしろ、意思決定する経験を積まなければ、いざというとき決められないのは当然です。決めて失敗したり、成功したりというスモールステップを踏みながら、自分はどういう人間なのかに気づき、次の決断に活かす。そうしたトレーニングの機会は学校にもたくさんあります。文化祭の役割決めや、修学旅行のグループ行動における行先決めなどもそう。生徒任せにするのではなく、「その選択には、どんな意味があるの?」「役割を経験して何を感じた?」と先生が問いかける。すると、「自分にこんな一面があることに気づいた」とか、「こんなことが気持ち良かった」など、自分をメタ認知することもあるはずです。生徒の心の動きを捉え、揺れ幅を広げる機会があるのに、それをしないのはもったいない。前年踏襲で消化しがちな学校行事も、先生がキャリア形成の視点をもつことで教育的価値が発揮されるのです。 忘れられがちですが、ホームルーム活動(小・中は学級活動)も、生徒会活動も、学校行事もすべて、教育課程内の「特別活動」として位置づけられた教育活動であり、「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」という三つの視点をもっています(図1・2)。 特に、ホームルーム活動と生徒会活動は生徒に主体があり、「このクラスはここが問題だよね」などと、課題自体を生徒が発見し、解決を目指す自主的・実践的な活動です。その点、学校が主体となり、先生が決めた目標や範囲内で子どもたちが実践に関わる学校行事と比べ、「決める」範囲が広く、その力も問われます。にもかかわらず高校におけるホームルーム活動の取り組み状況はどうでしょう。先生方に教科の専門家としての意識が強いことや、出口指導に労力がかかることもあり、LHRをいわば「都合のいい時間」として使っていることも少なくないかもしれません。そうしたことを念頭に、以降、ホームルーム活動を中心に述べさせていただきます。 図3にある通り、新学習指導要領では、ホームルーム活動の内容を小・中・高ともに⑴⑵⑶に分類して説明しています。このうち⑴は、集団として、「合意形成」を進める自発的、自治的な活動の形態。⑵と⑶は、個人として、自己の在り方生き方を「意思決定」していく自主的、実践的な活動の形正解のない、無数の選択肢を前に迷えることは、実はとても幸せなこと「決める」ためのトレーニングの場としての「特別活動」「ホームルーム活動」を通じて集団の中で合意形成する意味特別活動における三つの視点図2自分で決める、他者と決めて実践する。そのプロセスを学ぶ場が「特別活動」藤田晃之(筑波大学 人間系 教授)192019 MAY Vol.427
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