キャリアガイダンスVol.427
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集団としての合意形成個人としての意思決定キャリア・パスポートの活用等※新学習指導要領をもとに編集部で作成高校(1)学級や学校における生活づくりへの参画(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全(3)一人一人のキャリア形成と自己実現中学校(1)学級や学校における生活づくりへの参画(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全(3)一人一人のキャリア形成と自己実現小学校(1)ホームルームや学校における生活づくりへの参画(3)一人一人のキャリア形成と自己実現(2)日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全一人自己一人自己一人自己新設高校生は大人の失敗からも学ぶ。だから格好つけたロールモデルである必要はない態と位置づけられています。 まず、内容⑴で重視する合意形成についてですが、これは全員の意思統一という意味ではなく、実践内容について合意するということです。例えば、文化祭の出し物を決める話し合いで、最終的に、自分とは異なる意見にまとまることもあるでしょう。だとしても「議論した結果なのだから…」と受け止めて、主体的に役割を果たす。それも含めて合意形成です。 時には、「俺はそもそも反対だったし、そんなことしたくない。いっそ失敗してしまえ」と思うこともあるでしょう。けれど、そうした葛藤も含めて、何かを感じ取ることが大切です。「嫌々やったけれど、結果的に仲間に頼られて良かった」と思ったり、「皆ががんばっているのにサボってしまった」と罪悪感をもったり。そうやって、自分に跳ね返ってくることが重要なのです。場合によっては、「やってみたけど、やはりここはおかしいよ」と修正案を出してもいい。何も全員が最初から最後まで笑顔である必要はないのです。 次に、個人としての意思決定についてですが、内容⑵が、「今、君はどうするのか」と、現在に比重を置くのに対して、内容⑶は、「では、これからどうしていくのか」と、将来に向かうことが大きな違いです。 新学習指導要領の総則には、「特別活動を要としつつ各教科科目等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」と記され、特別活動がキャリア教育の要であることが明記されました。まさに内容⑶のことです。 ここで重要なのは、要という言葉の意味。要とは、扇の骨を留める部分で、扇面がバラバラにならないようつなぐ役割を果たしています。これまで総合的な学習の時間や各教科を通して豊かなキャリア教育を実践していたとすれば、それは扇面のこと(図4)。要の位置に自分を置き、「この学びとこの学びはつながっていて、気づきを与えてくれる」とか、「これは私にとって意味ある学びだったんだ」など、教科等と自分を往還しながら、実生活や自分の将来に引きつける。それが「特別活動を要としつつ」ということだと、私は考えています。 今回の改訂では、小学校の学習指導要領に内容⑶の項目が新設されたことも注目です。もともと小学校では話し合い活動が盛んでしたが、小・中・高を貫くキャリア教育の系統性がより明確になったということ。小・中と積み上げてきた力を高める責任が高校に求められているのです。 その際、2019年3月29日付けで文部科学省から例示資料集が提示された「キャリア・パスポート」をぜひ活用してください。小・中・高をまたいで受け継いでいくポートフォリオ的教材として、生徒自身が、学校、家庭、地域での活動を記録し、折に触れて振り返るツールです。やり遂げた経験や、感謝された経験を含めての蓄積ですから、自己肯定感が低くなりがちな発達段階の時期に振り返ることで、今の自分を受容し、将来を考えるためのヒントを与えてくれるかもしれません。同時に、先生方にとっては生徒理解を深めるツールにもなるでしょう。特に新入生の担任にとっては、「中学ではこんな気づきがあって、こんなことを考えてきたのか」など、生徒一人ひとりに対する理解が深まり、クラス運営に役立つはずです。 ホームルーム活動をはじめとした特別活動は、「なすことによって学ぶ」ことを重視した自主的・実践的な活動です。とはいえ、体験して終わりではいけません。集団における合意形成や個人の意思決定に向けた話し合いを、いかに学びへとつなげるか。「決める」こと自体より、そこに至るプロセスに意味があることを生徒に理解させてほしいのです。同調圧力に流される個人としての意思決定。キャリア教育の要としての特別活動ファシリテーターおよびロールモデルとしての役割をホームルーム活動の内容と、系統的なキャリア教育の概念図3202019 MAY Vol.427
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