キャリアガイダンスVol.427
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※編集部作成要扇 面国語地理歴史公民数学理科保健芸術外国語家庭情報専門教科(工業・商業・水産・看護・福祉)特別活動総合的な探究の時間各教科特別活動を要とし、教育活動全体で取り組むキャリア教育のイメージ図4自分は何者なのかに気づいていく。「決める」までの、その過程こそ大切にテーションは難しい。けれど、こうしたテーマを自由に話し合えるクラスになると、「こんな見方もあるのか」「あいつ、意外と深く考えているな」など、相互理解が進み、一人ひとりの視野も広がっていきます。 そう考えると、特別活動を通じたクラスづくりは、教科の授業にも活きることに気づくでしょう。安心して意見を表明できる雰囲気があれば、授業中、質問しやすくなるし、わからないことをわからないと言いやすくなる。指導の改善にもつながり、結果、学力も向上するわけです。 もう一点、先生方の役割として、生徒のロールモデルになってほしいと思います。清く正しいモデルである必要はありません。小学生の場合、大人が失敗をさらけ出し過ぎると混乱する恐れがあります。けれど、高校生は大人の失敗からも学べます。だから格好つけなくていい。むしろ、もがき苦しみ、でも懸命に生きている姿を見せることが有効です。特に、「高校卒業時にどれだけ迷ったか」という話を、ぜひ。最初から教職を目指した方ばかりでないでしょうから、そうした自己開示は、決められないでいる高校生に勇気を与えると思います。 特別活動は日本が世界に誇るべき教育活動です。平成28年12月の中央教育審議会答申には「特別活動に関する指導力は、免許状がないこと等から専門性という点で軽く見られがちであるが、本来、小・中・高等学校の全ての教員に求められる最も基本的な専門性の一つである」とありますが、その通りだと思います。 もちろん、高校の先生方は、一人ひとりが教科の専門家です。しかし、学問的体系を究めている専門家は、大学や研究所にもいます。では、高校の先生を高校の先生たらしめているものは何でしょうか。広く生徒指導や進路指導に当たれることもそう。 でも私からすれば、専門の学問領域を超え、総合的・横断的で探究的な学びをデザインする「総合的な学習(探究)の時間」や、生徒の自主的・実践的な学びを支援する「特別活動」を指導できること。すなわち、子どもたちを狭い領域に閉じ込めず、さまざまな「知」に対して目を開かせ、自分の内側との往還関係を促すなかで、全人的な成長を支援できることだと思うのです。 ですから、「私は理科が専門なので、それ以外は指導できません」と言った瞬間、自ら高校の先生らしさを薄めてしまうことになると思います。クラスあるいは学年全体を見渡し、将来を決めかねている悩み多き生徒一人ひとりに対して適切な支援・指導ができる。そこにこそ、大学の教員には太刀打ちできない、高校の先生の専門性があると私は考えています。恐れもあるなか、意見が出やすいよう導く。そのためには、生徒に丸投げするのではなく、うまくファシリテートする必要があります。 その点、順序が逆になりましたが、先生の力量が試されるのが、内容⑵の「日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」です。学習指導要領では、内容⑵の題材として、「男女相互の理解と協力」や「国際理解と国際交流」などを挙げています。問題にしなければ気づかないようなことを、あえて考えさせ、自己の課題解決につなげていくわけですからファシリ高校の先生は教科の専門家そして全人的成長を促す教育者自分で決める、他者と決めて実践する。そのプロセスを学ぶ場が「特別活動」藤田晃之(筑波大学 人間系 教授)

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