キャリアガイダンスVol.427
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●3年目(18年度)…全学年の取り組み「田川高校のスマホルール」として提案 生徒総会 日本アルプスを望むのどかな環境に位置し、地域の多様な生徒が通う長野県田川高校。同校には、生徒が作った「スマホ利用のルール」がある。 それができた背景には、スマホをめぐる諸問題だけでなく、生徒への課題感もあった。今春卒業した34期生の担任を務めた瀧澤洋貴先生は、同校生徒について、「能力があるのに一歩引いてしまうところがある」と語る。彼らの力を存分に引き出そうと、34期生の学年団では、特別活動や総学にディスカッションやプレゼンを多く取り入れるなど、自ら考え意見発信する力の育成に注力していた。その延長線上に、34期生中心に取り組んだ、スマホルール作りの活動がある。 きっかけは、SNSが社会問題になり始めた2016年春、当時入学したての34期生に対して、スマホの適切な利用方法について講義を行おうとしたことだ。その準備として各方面と相談するなかで挙がったアイデアから、単に講義をして終わるのではなく、講義を出発点として生徒自身にスマホルール作りに挑戦させることとなった。 「誰かの作ったルールを押し付けても、生徒は反発するだけ。ルールを守ること以上に、スマホの問題を生徒一人ひとりが考えて判断することに意味があると考えました」(瀧澤先生) ルールを作るだけでなく、それを学校全体に浸透させるため、3カ年の取り組みとして計画。1年目は34期生のみでルール作りに取り組むが、2年目、3年目と段階的に新入生を巻き込んでいくというものだ(図1)。 1年目、最初のステップは教員主導の情報提供だった。34期生の新入生オリエンテーションおよび総学にて、情報科の瀧澤先生がネット利用に関する法律やネットトラブル事例などの講義を実施。また、保護者や生徒を対象にスマホに関するアンケート調査を行い、生徒一人ひとりがスマホの使い方を考えるための材料を提供した。 その次のステップとして、生徒主体の活動へ。10月、学年全体が集まり、どんなスマホルールが必要か、6人程度の1982年設立/普通科/生徒数657人(男子357人・女子300人)/進路状況(2019年3月卒実績)大学49人・短大32人・専門学校102人・就職33人・その他18人学校データルールの押し付けではなく生徒一人ひとりが考える教員主導の情報提供から始め徐々に生徒主体の活動へ生徒主体のスマホのルール作り 3カ年の流れ図1グループで話し合った。事前に「批判厳禁」「自由奔放」「質より量」「結合改善(他人の意見を発展させる)」という基本姿勢を共有したこともあり、自由な意見交換ができたという。 グループ学習で出た意見を集約するため、後日、ルーム長(学級委員)会を開催。2時間に及ぶ議論の末、学年生徒全員参加の「スマホのルール作り」を通じ自ら考えて意見発信できる力を育成田川高校(長野・県立)情報科瀧澤洋貴先生取材・文/藤崎雅子生徒主体各生徒へ決定内容の周知 HR●1年目(16年度)…1学年の取り組み教員主導生徒自身によるスマホのルール検討(グループ討論) 総合的な学習の時間・LHR(計2時間)代表者による意見集約、ルール策定 ルーム長会(クラス代表)10月10月スマホ・インターネットに関する危険性・法律に関する講義 新入生オリエンテーション合宿(1時間)ネットトラブル事例やSNSの危険性に関する講義 総合的な学習の時間(1時間)インターネットに関する保護者アンケート実施インターネットに関する生徒アンケート実施 ホームルーム(HR)4月6月7月9月4月生徒主体●2年目(17年度)…1・2学年の取り組み7月インターネットに関する生徒・保護者対象アンケート実施1・2学年合同スマホ学習 総合的な学習の時間・LHR(計2時間) ・スマホ・インターネットに関する危険性・法律に関する講義・生徒自身によるスマホのルール検討(グループ討論)代表者による意見集約、ルール改定 ルーム長会(クラス代表)9月10月各生徒へ決定内容の周知 1・2学年合同学年集会、HR10月教員主導生徒主体4月生徒の資質・能力を育む「特別活動」実践事例レポート222019 MAY Vol.427

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