キャリアガイダンスVol.427
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「鞍手には、学校行事で育つ、という校風がある」。教頭の田中憲育先生がそう語るように、鞍手高校では伝統的に学校行事をはじめとした特別活動に重きを置いてきた。さらに近年は、SSHならびにSGHの指定を受け、生徒を主体とした課題研究学習にも取り組んでいる。「SSHやSGHの探究型の学びにより、生徒たちは普段から主体的に課題に取り組んだり、意見を交し合ったり、発表したりする機会が多く、そうした力が着実に育まれている」と、田中先生は言う。 今回取り上げるのが、鞍手高校の伝統的な取り組みの一つ、「全校統一テーマ」の活動だ。例えば、「学校生活をより良いものにするために」などのテーマを設けて(図1)、半期に一度、ホームルーム活動の時間を使って各クラスで話し合う。1年生から3年生まで全生徒が一斉に、同じテーマを扱うのが特徴だ。鞍手高校出身のベテラン教員が高校生の頃からあったというこの全校統一テーマの活動は、平成12年ごろからは、クラス単位ではなく「分団」ごとに行われるようになった。分団とは、運動会や文化祭を行う際の縦割りの組織で、青・赤・黄の3色に分かれ、1年間を通して同じ分団で活動する。全校統一テーマの話し合いの際には、異学年もしくは異クラスが混じり合うよう分団内で班分けをして、5〜7人の生徒が班になって話し合う。より多様な生徒、多様な意見に出会うための仕掛けだ。「異学年(学年混在)」にするか「異クラス(同学年)」にするかは、その年のテーマなどによって決める。例えば、「百周年記念大運動会に向けて分団宣言を作ろう」というテーマだった平成29年度前期は学年混在の班で話し合い、現代社会における諸問題について知ることを目的とした平成30年度後期は、同学年・異クラスの班ごとに話し合った。 全校統一テーマの実施を中心になって担うのが、生徒会の「学年委員長」だ。各クラスの代表である「組長」を束ねるのが職務で、毎年2名が選出される。この学年委員長が主体となり、生徒指導部の担当教員と話し合いを重ねながら、テーマの選定から資料の準備、当日の進行の仕方までを詰めていく。 現在、全校統一テーマを担当するのが、長嶋優依先生。生徒指導主事の村上 滋先生もサポートする。平成30年度後期〜平成31年度前期の学年委員長を務める大坪丈将さん(2年生)と宮﨑 栞さん(1年生)と共に、平成30年度後期の全校統一テーマを実施した。 「従来は規範意識や学校の課題を主軸としたテーマが多かったが、今回は、生徒から社会課題について話し合いたいという強い希望があった」と長嶋先生。「自分が提案したテーマは却下された」と村上先生は苦笑するが、学年委員長がアンケートなどで集めた生徒の意見のうち数の多かった、「AI」、「18歳成人化」、「ネットリテラシーとSNS」の3つを取り上げることになった。さら異学年・異クラスの生徒と話し合う「全校統一テーマ」活動で、主体的に学び、関わり合う力を育てる鞍手高校(福岡・県立)生徒指導主事村上 滋先生縦割りの「分団」ごとに全生徒が同じテーマで話し合う全日制課程:理数科、普通科(普通科コース/人間文科コース)※定時制課程あり合格実績:国公立大学101名、私立大学255名(平成29年度)学校データ取材・文/笹原風花学年委員長を中心に生徒が主体となって進める「全校統一テーマ」の例図1「主体的」 「協働的」 「対話的」 「論理的」「自主・自律」 「規範意識」 「創造性」 「多様性」「共感」 「課題解決型」 「異学年・異クラス」●キーワード●過去のテーマH14・前期 「週五日制になった今、時間の使い方を考えよう」H19・前期 「ルール、モラルを考え、規範意識を向上させよう」H19・後期 「鞍高イノベーション」~学校外での鞍高生の 態度をマナーアップしよう~H23・前期 「活気ある学校にするために、 今わたしたちにできること」H24・前期 「鞍高生らしい生活を送るために」H24・後期 「マナーを身につけよう ~社会に出て行くときのために~」H25・前期 「よりよい分団制のために」H28・前期 「災害を通して分団制を考える」H28・後期 「送迎車対策からはじめる鞍高改革」H29・前期 「百周年記念大運動会に向けて分団宣言を作ろう ~Think deeply, Act kurately~」H29・後期 「携帯との適切なかかわり方」教頭田中憲育先生長嶋優依先生262019 MAY Vol.427
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