キャリアガイダンスVol.427
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に、どうすれば意見が出やすいか、議論が活発になり深まるかといったことを学年委員長の2人が考え、長嶋先生に提案。3人で毎日のように話し合いを重ね、準備を進めていった。 一方、全校統一テーマはホームルーム活動の時間を使った特別活動の一環であるため、長嶋先生は指導案を作成する。授業の目的は「生徒会企画による話し合い活動への参加を通して、所属感を高め、学校生活に積極的に関わろうとする生徒を育成する」とし、「①現代社会における諸問題について知る」、「②班での話し合い活動を通して、自身の考えを表明し、他者の意見を受容することができる」、「③社会事象に目を向けることで、高校生として身につけておくべき資質・能力について考える」の3点を本時の目標に掲げた。 当日は、ホームルーム活動の1時間を使い、「テーマについて賛成・反対の立場をとり、その理由を述べる(個人で考えて意見をまとめ、その後、班でジグソー法を用いて意見を出し合う)」、「班替えをして、前のグループで出た意見を新しい班で共有する。さらに、テーマについて自由に討議する」、「話し合いを通じて感じた、変化する社会に対応するために、今、自分たちにできることや高校生のうちに身につけておきたい力について考え、意見を出し合う」という流れで進行。進行役は各クラスの組長が務め、話し合いが盛り上がるようファシリテートする。最後は各班の代表者が班内で出た意見を発表し、担当教員がフィードバックをして終了。生徒一人ひとりがワークシートに記入したものを組長がまとめシートに集約し、学年委員長に提出する。さらに、学年委員長が総まとめを作成し、各クラスに掲示(図2)。生徒から出た意見や感想を全校生徒の間で共有する。 生徒が主体となった全校統一テーマの取り組みについて、村上先生はこう語る。 「本校では、なぜだろうという疑問やどうすればうまくいくだろうという模索から、自らの課題を設定して解決していくという課題解決型の主体的な学びを重視してきました。ホームルーム活動で行う全校統一テーマの活動についても、独立した取り組みではなく、資質・能力を高める教育の一環と位置づけています。特にここ数年は、3年間を通した生徒の成長を感じます。SSHやSGHと連動した学びの成果は、確実に出ていると言えるでしょう。今後、こうした特別活動での学びがさらに進路と結びつくことで、生徒もより自信と意欲をもって取り組めるのではないかと思います」 さらに、田中先生はこうつなげる。 「特別活動の主体は生徒ですが、生徒だけの取り組みではなく、教員も一緒になってやることが大事だと考えています。教員がただの傍観者になってはいけません。生徒が何をどう進めてどう成長するか、教員間で意見を交わし合い、教育力の向上につなげていくことが求められると思います」 鞍手高校は、「たくましき前進者たれ」を校是に掲げる。これからの時代を切り拓く「たくましき前進者」になるための素地を、高校3年間でしっかりと培う。教員間でこうした価値観を共有し、実践されていることが、先生方への取材から垣間見えた。学年委員長が作成した総まとめ図2平成30年度後期~平成31年度前期の学年委員長を務める、大坪丈将さん(2年生・写真左)と宮﨑 栞さん(1年生・写真右)。 僕自身、高校入学前は明確な意見をもっているタイプではなかったのですが、全校統一テーマで学年やクラスを超えていろんな生徒のいろんな意見を聞くことで、たくさんの気づきや学びがありました。そして、共感したりいいなと思ったりした意見を吸収していくことで、最初はなかった「自分の意見」を次第にもてるようになっていきました。特に学年委員長として全体をまとめる立場に立った今期は、より多くの考え方に触れることができ、自分自身の思考や意見の質が高まったと感じます。(大坪さん) 社会的なテーマは、興味があっても友達と話題にすることはあまりないので、みんなで考えて話し合う良い機会になると思い、全校統一テーマに選びました。実際に資料を準備したり意見をまとめたりするなかで、自分では気づかなかった視点や異なる意見に出会い、知識もつき、新たな見方ができるようになりました。全校統一テーマは、他の生徒にとっても、そういう気づきの場になっていると思います。(宮﨑さん)さまざまな意見に触れることで、自分の思考や意見の質が高まるSSHやSGHと連動した資質・能力を高める教育の一環新たな視点や意見、知識に出会える気づきの場になる生徒の声話し合いで出た「今後変化の激しい社会に進出するにあたって必要になってくる力」、「鞍高生のうちに自身の力を高めるためにできること」などを挙げ、最後にまとめコメントで締めている。※先生・生徒の所属・学年などは取材当時のもの生徒の資質・能力を育む「特別活動」鞍手高校(福岡・県立)272019 MAY Vol.427
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