キャリアガイダンスVol.427
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日本の学校教育の目的は、人格の完成です。教育基本法の第1章第1条には「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とあります。そして、人格と自己決定は切り離せないものです。 人格とは何でしょうか。教育基本法成立の1年前に旧文部省から出された「新教育指針」(1946年)には「人間は、人間性として備わっているいろいろな性質・能力・要求を、外からいたわり育てられるだけでなく、内に自らの力、自由な意思と責任とをもって統一し、はたらかせる事ができる、これが人間の人間たる資格で、人格とよばれるものである」と書かれています。 人格とは自己決定ができるということ。人間はいろいろな経験をし、大脳皮質の中にインプットしていきます。何か行動を起こさなければいけないというときに、それまでの経験から得たことを食い違いのないように統合し、自分でどう行動すべきなのかを判断するしくみが人格なのです。 判断した結果、行動として見えるもので人格が判断されます。人格は脳細胞の働きですから、そのものは見えない。これが教育学的な人格の捉え方です。幼稚園生よりも小学生、高校生よりも大学生はたくさんの経験をしています。方法の幅は広くなり、質の高い選択ができるようになっていく。それが人格の完成を目指すということです。 つまり、人格というのは自己決定で、自己決定ができるようにしていくのが人格の完成を目指すということ。自分を、よりよく生かす自己決定を積み上げていくことが、幸せな人生を生きていくことにつながります。生きること、人生を歩むということは選択の連続です。西村和雄氏(神戸大学)と八木 匡氏(同志社大学)の調査によれば、幸福感には学歴よりも自己決定が強い影響を与えているそうです。(16ページ) 先に紹介した「新教育指針」には 「自ら考え自ら判断して行動し(略)他の人々と協同してやってゆくように(略)一歩々々人格を完成するように育ててゆくのが教育の仕事である」とも書かれています。教科指導で育成する資質・能力も、生徒指導で育成する自己指導能力も、本来すべて人格の完成という目標を前提としたものなのです。國學院大學栃木短期大学 特任教授須藤 稔すどう・みのる●栃木県の公立中学校教諭、管理職を経て宇都宮共和大学、白鷗大学、現任大学で後進の指導にあたってきたほか日本特別活動学会会長、栃木県教育長などを歴任。また、第8期中央教育審議会教育課程部会専門委員 特別活動ワーキンググループ主査代理を務めたほか、学習指導要領の改訂、中・高等学校学習指導要領および解説書、生徒指導提要の作成などに関わる。生きることは選択の連続自己決定が幸福度を高める自己決定の連続が人格をつくる学校教育の目的は人格の完成。そしてそれを可能にする特別活動はすべての教育活動の要となります。教科の専門性だけでない、教師の原点、役割とは何か。長年にわたり、特別活動のあり方をリードしてきた須藤稔先生に伺いました。取材・文/江森真矢子302019 MAY Vol.427
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