キャリアガイダンスVol.427
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まとめ/長島佳子 撮影/朝倉佳苗1892年創立。127年の歴史をもち、各界に卒業生を輩出。私立校で入学者の専願率97%(2017~2019年度平均)を誇る。文武両道を唱え、国公立大学、私立難関大学にコンスタントに合格者を出しながら、部活動でも全国優勝する多数の選手、チームを育てている。もり・りょう1963年生まれ。東京理科大学理工学部卒業。学校法人石川義塾の4代目として育ち石川高校で学ぶ。当初は母校で教鞭を執ることに反発し、大学卒業後は東京都の公立高校の教員となる。先代である父が病気になったことで1993年に母校に赴任。1997年に副校長、2001年に37歳の若さで現職就任。少子化により改革を余儀なくされてきた時代に、部下が恩師ばかりの環境の中で、学校改革に邁進してきた。「生徒は愛情を注いだ分だけ返してくれる」と教員の醍醐味を語る。2018年私立中学高等学校教育振興功労者表彰。日本私立中学高等学校連合会常任理事、福島県私立中学高等学校協会長等、校外での役職も多数歴任。 私の好きな言葉は「不易流行」です。建学の精神に則りながら、社会の変化に対応できる時代に合った人材の育成をしていかねばならないと常に考えています。具体的には、学力、人間力、国際感覚の養成です。これらを建学の精神の一つである「行学一如(学んでそれを実践してこそ、本来の学問の意味がある)」の考えに基づき実践し、行動力のある生徒を育てています。 その代表的な取り組みが、「7つの習慣J®」の導入です。ビジネスパーソンのバイブル的存在であるスティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』を生徒向けに授業に落とし込んだもので、この考えに触れたとき、生徒の人間力向上に役立つと確信しました。授業での導入には、ファシリテーターの資格取得が必要なため、最初は私と教頭が率先して研修を受けて資格を取りました。現在では本校の25人の先生が取得しています。 2014年からは1学年の必修授業(学校設定科目)として実施しており、例えば偉人の業績についてアクティブ・ラーニング形式で議論しながら考え、そこから自分の行動目標をたてて実践し、次の授業で振り返りを行うことを繰り返していきます。この取り組みを始めてから、部活動で全国優勝する生徒が続出し始めるなど、目に見える成果が出てきています。目標に向かってチャレンジする、行学一如を生徒たちが実行しているのです。 生徒たちの人間力向上については、感覚的に捉えるのではなく、ルーブリックにより成長度を可視化して評価しています。「建学の精神」と「生きる力」の2本柱があり、それぞれ10項目について5段階で生徒が自己評価します。「生きる力」の評価項目は学力の3要素にも対応しており、将来的にはポートフォリオにも連携させたいと考えています。 教育改革には教員のスキルアップが欠かせません。私学は教員の異動がないことがメリットである一方、閉鎖的にもなりがちです。そのため、新しい情報や外部の知見を取り入れるために、年に3〜4回の教員研修を実施しています。私自身も外部のさまざまな役職に就きながら情報を収集し、職員会議などで共有を図っています。 また、学校と家庭が同じ方向を向いて共に生徒を育てることも必要です。そのために、5年前から「7つの習慣J®」を保護者向けにアレンジした「親学講座」を開催しています。子どもとの効率的な接し方などを学んでいただき、好評をいただいています。 一昨年には創立125周年を迎え、地域の方々も当たり前のように本校の生徒の活躍を応援してくださっています。これからも街に元気を与え、地域から信頼される学校であり続けるために、グローカルリーダーの育成に励んでいく所存です。目標に向かってチャレンジし、学んだことを実践できる生徒たち教員、保護者、地域が一体となって同じ方向を向いて生徒を育てていく森 涼石川高校 校長石川高校(福島・私立)行学一如の精神のもと行学一如の精神のもと夢や目標にチャレンジできる夢や目標にチャレンジできる行動力ある生徒を育てる行動力ある生徒を育てる352019 MAY Vol.427

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