キャリアガイダンスVol.427
39/66

D課題を設定しているが、現状の問題点の理解や把握が不足している。事実と感情の違いを理解できる。物事を構成する要素にある程度分けることができる。項目定義SA課題設定力現状を理解した上で、適切な課題を設定している。独創的な着眼点で適切な課題を設定している。また、現状の問題点を踏まえ、そこから課題設定までのプロセスが明確で、論理的に展開されている。適切な課題を設定している。また、現状の問題点を踏まえ、そこから課題設定までのプロセスが明確で、論理的に展開されている。論理的思考力複雑な事象の本質を整理し、道筋を立てて説明している。客観的事実のみに基づいて、複雑な事象の本質を整理し、物事を順序立てて結論を導くことができる。客観的事実のみに基づき、物事を順序立てて整理し、結論を導くことができる。分析力課題の因果関係を理解し、本質(原因)を見出している。物事を構成する要素に分け比較し、本質(原因)を見いだし、類似する事例に適応させることができる。物事を構成する要素に分け比較し、本質(原因)を見いだすことができる。ツール3させ、生徒が自分たちだけの力で疑似社会人体験をすることを目指している。 また、5年間を通して複数の外部ツールを用いて思考スキルを高めるトレーニングを取り入れているのも、みらい科の特徴の一つ。さまざまなきっかけを与えながら思考力、判断力、表現力などを養い、「できる」という自己肯定感を高めていく。「『どうせだめと思っていたけど、やってみたらできた』という気持ちを大切にしたい。それには〝きっかけの質〞を上げることが何より大事なので、外部ツールも常に見直しよりよいプログラムに入れ替えています」(河越先生) 高1では次年度の修学旅行に向けてオーストラリアに関する学習をするが、情報収集、分析、まとめ、情報発信のすべての能力を総合して発揮させる。教員が手をかけなくても中3のプレゼンより質の高いものに仕上げるのが目標だ。 そして高2では、地元の企業や店舗とコラボして商品開発を体験。グループごとに商品のアイデアを出し合い、コンペ形式で代表商品を決定する。学園祭で発表するためのイベント企画もすべて生徒が行う。徐々に上げてきた負荷も最大限にかけ、教員が手をかけることも徐々に少なくなる。多少失敗してもチャレンジ みらい科の集大成はみらい論文で、高1から高2にかけて仕上げる。1人1テーマで1万字の完成に向け、みらい科の時間とは別に月1回ゼミ形式で実施。学年の枠を超えて全教員が指導に当たる。 必ず生徒が主体的に取り組める「好き」をテーマにする。教員は生徒からどんなテーマが出てきても否定せず、苦しくても好きだから書けるテーマを探させる。 テーマが決まれば論文の冒頭部「はじめに」を書き、スライドを作成して各自5分程度でプレゼンする。なぜ自分はこのテーマについて調べようと思ったのか、選ぶまでにどのような経緯があったのか、どのような仮説を立てどのような手法で立証していくか…「はじめに」の発表原稿を書きながらじっくり考える。そして他の生徒は敬意を払って聞く。この作業を通して一部の生徒はテーマ設定を変えることもあるが、それも否定しない。もがきながらここを乗り越えさせ、粘り強く論文に取り組む気持ちを作り上げていく。 論文は何度もブラッシュアップし、最終的には大学入試にも活用できるレベルの成果物として完成させるのが目標だ。「生徒のたどる過程を見ていると興味関心の方向性がわかり進路指導の参考になります」と進路指導部長の花形映里先生。回を重ねるにつれ、教員も生徒の「好き」に寄り添い、楽しみながら伴走できるようになってきているという。「みらい科」の評価のため25項目のルーブリック評価表を作成。まずは論文で導入したが、今後すべての取り組みで活用する。生徒が自己評価してふりかえりシートに記入したり、発表時には相互評価も行う。 漆の研究をきっかけにデザインの視点から伝統文化を学ぶ大学へ進学した生徒。日焼け止めクリームに興味をもって調べ始めたことから、自身の理系志向に気づき論文を入試に活用して難関大学に合格した生徒。また好きなテーマパークについて調べるうちにおもてなし文化に興味をもち今は国際観光を学んでいる生徒…論文を書くことで得た経験を進路選択・進路決定に活かす生徒が出てきたことは、みらい科の大きな成果。「たとえ世の中から漆が消えても、次を見つけて生きていける強い力が育っていると思います」と河越先生は言う。また、みらい科でのさまざまなチャレンジを経て粘り強さが身についた生徒が出てきている実感もあるそうだ。「こういうことをやりたい、学びたいという気持ちが強くなったので、あとはそこに自信をもって踏み込んでいける学力。低学年からの学習習慣を徹底させ、見える学力と見えない学力の両方を身につけさせたいです」(花形先生)みらい論文を進路に結びつける生徒も「好き」なテーマを極める集大成としてのみらい論文ルーブリック評価表と生徒のふりかえりシート論文は1冊ずつ綴じて本人に渡す。大学受験に活用する生徒も出てきた。※先生・生徒の所属・学年などは取材当時のもの392019 MAY Vol.427

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る