キャリアガイダンスVol.427
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まとめ/長島佳子 撮影/髙橋良輔1964年創立。進路希望によって4コース編成をとり、近年進学実績の上昇で注目を浴びている。特に学力の3要素を丁寧にみる多面的評価に対する指導を強化することで、国公立大学推薦AO入試の合格率の伸長が著しく、2018年度入試では、茨城県内で最大級の57名が合格した。おたべ・みきお1954年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。両親が教員という家庭に育つ。茨城の県立高校の教員を経て、教育庁で管理主事を務める。その後も、県立高校の管理職と教育庁でキャリアを重ねながら、東日本大震災の直後に教育庁次長となり、教育現場の復旧に奔走した。2013年水戸第一高校校長就任、2015年より現職。自身を「本来保守的な人間」と語るが、常に変革期に遭遇し、変化を求められてきた経験から、マンネリ化に陥ることのない「学校組織の活性化」を意識するようになり、新しい取り組みへのチャレンジを続けている。教員になったときは、野球部の顧問になりたかったが、初任校が女子校で当時野球部がなく剣道部の顧問に。以来剣道にのめりこみ、剣道教士7段。授業と部活の両輪で生徒のために全力を尽くすことがモットー。 現在進行している教育改革では、大学入試において生徒を多面的に評価するとされています。なかでも、学びに対する主体的な姿勢をどう評価していくかは、大学でも議論され、高校現場はその対応に追われていると思います。本校の生徒が多数進学する茨城大学では、調査書の内容を点数化することも検討されています。 こうした状況を我々はチャンスと捉えています。本校は私学として、建学の精神である「洗心以て自己の確立を期す」の下、道徳観の涵養を基礎に、主体的に学び、活動することによって、現代社会の諸課題を解決できる資質をもつ生徒を育てたいと考え、学校改革に臨んでいるからです。大学側で「高校生活3年間で何をどう学んだか」についての評価比重が高まれば、生徒たちが高校生活全体を積極的に送ってくれることにつながります。 具体的な取り組みとしては、ICT環境の整備があります。2017年度の入学生から、生徒全員にタブレットを導入しました。導入を決めてから1年間、毎週教員研修を行い、生徒が所有する時点では足並みを揃えてスタートすることができました。利用方法は多岐にわたり、生徒の自主学習をはじめ、家庭学習での宿題や課題のやりとり、授業後の振り返りアンケートの記入・回収もタブレット経由で行っています。日々の学習の記録を生徒が「資料アーカイブ」に入力することで、ポートフォリオが作成されています。 タブレット導入と並行して、廊下に机を置いて生徒たちが自由に自主学習できる場所をつくりました。既存の自習室などは私語厳禁ですが、廊下では会話しても良いため、生徒たちはタブレットを使いながら自主的に学び合いをするようになりました。 本校のもう一つの特徴的な取り組みが、総合的な学習の時間の探究プログラムとして、2018年度からスタートした「SUIJOよろづ研究室」(通称・SY研)です。教員が興味・関心に応じて設けた研究室に、学年やクラスを超えたメンバーが集って各自のテーマで探究します。「他校にない独自の取り組みをしよう」と、若い先生方からの発案でスタートしました。今年度からは大学院との連携も予定しており、調べ学習に留まらない深い学びに広げていきたいと考えています。 教育改革の推進には堅固で強力な組織力が不可欠です。強い組織であり続けるためには、常に新しいことにチャレンジしていかねばなりません。組織のトップに求められているのは、形骸化していることを見直し、現場が新しいことに取り組める環境づくりです。働き方改革も同時に求められるなか、ビルト&スクラップを先生方が怖がらずに進められるよう、現場の声に耳を傾け、学校のチームワーク力を高めていきたいと考えています。高大接続改革による主体性評価を自校のチャンスと捉える新しいチャレンジができる環境をつくり強い組織力を維持していく小田部 幹夫水城高校 校長水城高校(茨城・私立)学年縦断の探究学習で多様な仲間と主体的な学びができる生徒を育てていきたい452019 MAY Vol.427

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