キャリアガイダンスVol.427
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電子科と社会福祉科の横断的な取り組みである、介護用スプーンや視覚障がい者向け段差検知白杖などのオリジナル福祉機器の製作は、日本政策金融公庫主催の「高校生ビジネスプラン・グランプリ」において全国ベスト100に選出された。る」と達成感を語っている。 また、「福祉のこころ推進校」認定以来、従来は学科単独で行っていた活動を、他学科に広げる動きが活発化している。例えば、農業経営科有志が農業販売実習として参加していた地域イベント「やいた軽トラ市」に、現在は全5学科が参加し、各専門分野に関する出し物や販売を行うようになった。 「生徒は、花苗を一つ販売するにもディスプレイやトークを工夫するなど、より効果的な方法を考えながら活動します。それを地域の皆さんに喜んでいただき、称賛や激励の言葉を掛けられることも多いようです」(滝澤幸憲教頭)特に苦労したのは、レトルトカレーを通していかに矢板の良さをアピールするか。最初に生徒が考案したレシピは、外部メンバーからの厳しい指摘により、プランを白紙に戻して一から見直す事態に。生徒はショックを受けつつも、レトルト化に適する具材について食品製造会社に教えを請い、菅野校長が差し入れた全国各地のご当地レトルトカレーを研究。また、同校生徒に矢板のイメージに関するアンケートをとって具材選びの参考にし、試作を繰り返した。 最終的に、外部メンバーにも「胸を張って紹介できる」との評価をもらい、矢板産りんごや栃木県産の和牛ひき肉を使用した黒カレーが商品化された。リーダーを務めた3学年の山田真生さんは、「諦めずにやって、矢板の良さを集結させたカレーができ、自分もひとつ大人になれた気がす 機械科・電子科のみが実施していた近隣中学校4校での出前授業は、18年度、全5学科有志による「矢高フェア〜仕事と資格を学ぼう」として拡大開催。中学生に向け、自分たちが学んでいる各学科の学習内容について、実技を交えて紹介した。訪問する中学校の出身者を優先的に連れていくため、顔見知りの後輩に向けて誇らしげにプレゼンする姿が目立つという。また、同校は近年、定員割れが続いていたが、18年度の特色選抜(推薦)の志願倍率が平均1・5倍に急上昇しており、矢高フェアで生徒が同校の魅力を伝えたことも影響していそうだ。 さらに、学科間連携の方法は多様化している。単に同じイベントで各学科がばらばらに活動するのではなく、複数学科の専門性を組み合わせて共通の課題に対応しようという取り組みも出てきた。 その一つが、高齢者などの心身機能の維持・向上の支援に全5学科で取り組む「矢高デイサービス」だ。市社会福祉協議会と連携し、同校に社会福祉施設利用者や地域シニアクラブ会員を招くなどして、18年度は3回開催。機械科が校内の段差にスロープを設置し、社会福祉科が一緒に体操し、栄養食物科がおやつを提供するなど、各学科の専門性を活かして一つのデイサービスを成立させている。 また、電子科と社会福祉科が合同チームを組み、オリジナル福祉機器を製作した例もある。16年度、介護現場を知る社会福祉科のアイデアと、電子科の3Dプリンターによるものづくり技術を組み合わせ、介護用スプーンを製作。17年度はその改良と、新たに視覚障がい者向け段差検知白杖の設計・製作を行った。今後はレンタルなどの幅広い使用方法を考え、地域に活かしていく計画だ。 「社会がそうであるように、本校には多さらに、各学科の専門性を活かして協働で一つの目標に取り組む学科単独の活動から複数学科が共同で参加する活動へプロジェクトに参加した生徒は、外部のメンバーと共に検討会や研究を重ね、校内でもアンケート調査や試食会などを実施し、最後の検討会には3案を提出。そのなかから辛みを効かせたりんごカレーが選ばれた。■新カレー開発プロジェクト■福祉機器の製作農業経営科は花苗・野菜の販売やヤギのふれあい体験、機械科と電子科はロボット展示やポッポ汽車運行など、栄養食物科はポプリづくり、社会福祉科は健康体操で会場を盛り上げた。電子科は実際の装置を使って電気回路について解説し、栄養食物科は大根のかつらむきの技術を披露するなど、学科ごとにプレゼンテーションを実施。■やいた軽トラ市■中学校での矢高フェア一見、福祉とは無関係にみえる工業系の学科も、高齢者や障がい者のための仮設スロープの設置や、車いすのメンテナンス、LED電光掲示板の設置などでデイサービスに貢献。■矢高デイサービス482019 MAY Vol.427

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