キャリアガイダンスVol.427
57/66

■ 広島女学院中学高校(広島・私立)学習内容について3人組で調べて話し合って理解を深め、最後に発表するのが授業の基本。各グループにはパソコンも配布、そこから今田先生が用意したプリントや動画およびインターネットにアクセスできる。要点をまとめやすいようホワイトボードも活用。「自分を愛するように隣人を愛しなさい」といったキリスト教の教えを基盤とする学校。教科授業や一般行事のほか、礼拝やキリスト教行事、聖書の授業があり、それらを通して「自らを正しく受け入れ、他者のために祈り行動できる」人格を養い、「身につけた知識をどのように用いるのか」を学ぶ。昨年度までSGH校でもあり、「のびやかに、しなやかに、世界へ」というスローガンのもと、対話力を養う総合学習などにも注力。普通科/1886年創立生徒数(2018年度)1289人(女子のみ、うち高校生は633人)進路状況(2017年度)大学182人・専門学校/各種学校2人〒730-0014 広島市中区上幟町11-32 082-228-4131 http://www.hjs.ed.jp/避けて通ってはダメだと思ったのです」 毎回の授業は基本、生徒が隣同士で、先週学んだことを説明し合うことから始める。資料は何も見ずに自分の言葉で。知識を自分のものにするための練習だ。 本題に入ってからは、3人組の学習が基本になる。各グループが今田先生の用意したA・B・Cの資料のいずれかを読み、パソコンで調べ物もする。続いてA・B・Cのことを調べた生徒が全員揃う3人組になり、知り得たことを説明し合い、情報を統合し、学習内容への理解を深める。いわゆるジグソー法の学習だ。 そのうえで各グループが「資料の写しではない、自分たちで考えた図や説明文」で学んだことを発表。さまざまな発表にも挑戦していて、月経の仕組みを学んだ授業ではホワイトボードに情報をまとめ、性交から着床までの過程を学んだ授業では、各グループがパソコンを使いGoogleサイトでホームページを作成した。 授業の終わりには、毎回、生徒が振り返りシートに今日の気づきや感想を書く。れることを共有する。次いで、母が我が子に送った著名なあいうえお作文の例を引き合いに出して、「もし自分に子どもができたらどんな言葉を送りたいか」というお題で、生徒もあいうえお作文に挑戦。生まれたあともさまざまな人に見守られて命が育っていくことに思いを馳せる。 そのうえで、命誕生のプロセスを途中でやめる人工妊娠中絶と、その選択をせざるを得なかった人の事情も学ぶ。さらに「産もうか、産むまいか」という状況になる前に何が選択できるかも考えよう、として、避妊についても学習する。 「性教育は照れくさくて最初は少し嫌でした。でも、特にうちは女子校なので、卒業してからあまり免疫がないまま男子と関わるようになる子もいるんですね。 「生徒の心がどう変化したのか、経過がわかるようにすることも大事にしたいんです。ポートフォリオの位置づけですね」 また、学んだことが身についたかチェックする定期テストでは、穴埋め問題は出さず、記述式にしているそうだ。語句やデータを暗記することより、例えばこの先、性行為をするときや妊娠をしたときに、「こうだからこうする、と、行動の最後の選択をする『理由となるところ』を覚えていてほしい」という狙いからだ。 2学期の最終授業では、「学んだことをみんなで伝えていけば、まわりの人の生活もよくできるかもしれない」として、同世代へ向けて性教育の啓蒙スローガンを考えた。今田先生が改めて強調する。 「資料を見返してもかまいませんが、そこにある言葉そのままではなく、自分たちの言葉で伝えてください。そのほうが同世代にはきっと響くはずだから」 20分のワークのあと、生徒たちからは次のようなスローガンが披露された。 「『なんでするん? 欲しいわけじゃないんでしょ? ホテル行くよりスタバいこ?』。子どもが欲しいわけじゃないのに、リスクがあることを軽々しくするより、おいしいもの食べて時間を過ごすほうがよくない? という思いを込めました」 「『母として 抱え込まないで 相談を』。例えばできちゃったと思ったら、一人で悩まず、親とかパートナー、友人、病院に相談してほしいと思ったからです」 「『カァモン ベイビー NSD♪』(ヒット曲のもじり)。NSDは『No Smoking & drinking』の略で、出産前は子どもを健康に育てるためにタバコやお酒をやめよう、という意味を込めました」 「『ちょっと待って。言える勇気と聞く勇気』。嫌なことは嫌という勇気と、相手(男性)も聞く勇気をもってほしいからです」 「『コンドーム 装着時が潮時だ』。コンドームは射精前じゃなく挿入前にしないと意味ないよ、と伝えたいと思いました」 そうした発表を受けたうえで、最後に今田先生が生徒に語りかけた。 「将来こうやって発信するかどうかは別として、パートナーになる人には必ず自分の思いを伝えてください。相手との関係を重視するあまり、結果的に、大切にしないといけない自分の体をないがしろにしてしまうことがあります。そうなってほしくないので、今まで学んだことを頭の中に置いて、行動を選択してほしいです」自分や人を大切にするために知識を学び、伝えていく授業の最後は振り返り。毎授業行うことで生徒も書き慣れてきて、また、授業で何を学んだか、どんなことを感じたり考えたりしたか、ということを生徒が自覚しやすくなる。啓蒙スローガンの発表では、なぜそれを伝えたいと思ったのか、理由まで説明することに。プリントなどは見ずに、自分の頭の中に入った知識をもとに話すことも求めている。572019 MAY Vol.427

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る