キャリアガイダンスVol.427
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リクルートサービスを活用した実践事例【進路】※先生・生徒の所属・学年などは取材当時のもの 北海道石狩翔陽高校は7つの系列を設けている総合学科高校。2・3学年では100以上の科目を個々が選び受講するため、1学年の秋までは科目選択に多くの時間を割くことになる。中でも生徒一人ひとりと担任との面談は重要だ。 科目選択と同時にキャリア発達支援のための指導も行いたい…そこで、個別面談の間、その他の生徒たちは従来外部のワークブックを使い進路学習をしていた。「ただ、そのワークブックに記入するために教員が指導する時間が必要だったことと、1冊淡々とこなすタイプのものだったため生徒が飽きてしまうというデメリットがありました」と総合学科推進部長の奥本将晴先生。教員が面談している間、さまざまなキャリア発達段階の生徒が飽きずに取り組める進路学習はないか模索していたという。 そして、2年前から取り入れたのがスタディサプリ進路『未来事典』。50人の職業人インタビューが掲載されており、一部を付属のDVDに収録。生徒は体育館でDVDを一斉に視聴し、感想などをオリジナルのワークシートに記入する。自分の面談のときだけ別室に向かう。「誰でもひと言は書ける仕組みにする一方で、よく思考してたくさん書いてもよい。生徒の学力差、発達度に応じて活用できる、そんなワークシートにこだわりました」と奥本先生は言う。映像ということで生徒も集中できるし、教員が指導せずとも生徒だけで進められる。教員は最も重要な面談に時間を割ける。 同校では3学年の課題研究(4000字のレポート)に向けて、書き、思考し、アウトプットする訓練に力を入れている。産業社会と人間や総合的な学習の時間を中心に、学びの後には書く作業を取り入れ、まずは書く分量にこだわっている。「記述式の記入欄がほぼ埋まればA、8割でB、半分以下ならC。Cの場合は生徒に戻し、B以上になるまで書かせます。少しずつ少しずつ書けるようにしていく。努力させる。絶対に書けるようになります」と言うのは産業社会と人間担当の園田陽子先生だ。「高校時代は質にこだわらず、書くことと思考することを訓練のように繰り返すほうがいいのでは」と奥本先生。「質にこだわると手本を真似るということも出てきます。それより稚拙でも自分で考え書くことを重視したい」と言う。ワークシートに自分の考えを書きそれを基にディスカッションする、発表し評価するという流れも取り入れている。 スタディサプリ進路はこの思考したり書いたりするサイクルにもマッチした。「教員は問い続ける、生徒は思考し続ける、それが進路指導。ここを出発点に思考し他者と協働することの楽しさに気づき、学問選択・進路選択へ発展させたいと考えています」(奥本先生)。1学年前半は科目選択に追われ、キャリア発達支援のための指導が遅れがちに課題書くこと、思考することを繰り返しながら主体的に進路を選びとる活用 科目選択 課題研究 教員負担軽減 記述訓練【活用キーワード】1978年創立/総合学科/生徒数927人(男子397人・女子530人)/進路状況(2018年3月実績)大学進学76人、短大進学19人、専各進学140人、就職56人、その他14人オリジナルワークシート取材・文/永井ミカキャリア発達に応じて発展的活用が可能なオリジナルワークシートで思考力を鍛える北海道石狩翔陽高校(北海道・道立)写真左から総合学科推進部長奥本将晴先生1学年担任・産業社会と人間担当園田陽子先生科目選択のための個人面談時、生徒たちは自分の面談時間がくるまで体育館でスタディサプリ進路『未来事典DVD』を視聴する。その後、ワークシートに記入。DVDに登場したエンジニアや営業職など4人の職業人について、「印象に残った言葉や大事だと思ったことを書き出しましょう」「あなたは、この仕事をやってみたいと思いますか? そう思った理由も書きましょう」という共通する2項目と、それぞれの職業に合わせた1項目の問いを投げかけている。●考える力をつけるワークシート新聞記事を読み、要約したり課題と考えることを書き出し、その解決のためにどうすべきか考えて記入する。産業社会と人間では1学年の終わりから3学年にかけて課題研究に取り組むが、その前段階として1学年の11月に実施。以下はネットのデマについての記事を読んで書かれたワークシート。その後、ディスカッションに発展させることも。●社会の問題について考える632019 MAY Vol.427
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