キャリアガイダンスVol.427
9/66

が見えてきました。集団の中で決めることに関してはどうでしょう?黒瀬 中学までは、何かを決める際、学力の高い子がリーダー役となり、率先して決めてきたのに、今の勤務校には、そういうタイプが少なく、決めることに戸惑う様子も見えます。そのため1年生を中心にリーダーシップ教育が必要だと感じています。林 その点、うちは、リーダー経験のある生徒が多いはずですが、全体的に大人しく、自分から前に出ていく感じではありません。気の利く子が案を出し、他に意見が出ないので、そのままその案に決まることも多い気がしています。宮永 特に文化祭の出し物はなかなか決まらないですよね。いざ決まっても、女子はがんばるけど、男子は控えめというのはよく見る光景です。黒瀬 合唱祭の指揮者や、体育祭での多学年にまたがるリレー種目にも出たがりません。要するに必要以上に目立つことや、責任が重いことを嫌がるのです。特に1年の初期は、SNSの影響もあって、目立ちすぎると何を言われるかわからないので、変に身構えてしまいがちです。宮永 人間関係ができる以前のSNSの使われ方は大きな問題です。黒瀬 ネットでの芸能人たたきなど現実社会で起こることが学校で起きても不思議ではありません。そのためLHRなどでネットリテラシー教育をしていますが、良い意味でのスルー力を身につけてほしいです。ぎくしゃくした段階を乗り越えて「この集団は自分を受け入れてくれる」という信頼関係ができてくれば、自然と発言できるようになるので。林 教員の世界でも、皆で何かを決めることは難しい。提案しても「また、あんなこと言って」と言われ続けたら、躊躇するようになりますよね。―集団で何かを決めることが難しいのは教員も同じというなかで、どのような工夫をされていますか?進路指導上の課題として、(生徒の)「進路選択・決定能力の不足」が上位に図12010年2012年2014年2016年2018年1位進路選択・決定能力の不足進路選択・決定能力の不足教員が進路指導を行うための時間の不足教員が進路指導を行うための時間の不足進路選択・決定能力の不足2位家庭・家族環境の悪化:家計面について家庭・家族環境の悪化:家計面について進路選択・決定能力の不足進路選択・決定能力の不足教員が進路指導を行うための時間の不足3位教員が進路指導を行うための時間の不足教員が進路指導を行うための時間の不足入学者選抜の多様化入学者選抜の多様化入学者選抜の多様化安易に決める、他人任せ●大学名や偏差値により進路を決めようとする生徒がまだ多い。●安易に進路を決めたことで、離職や退学する生徒がいる。●友人や親の意見で決定している。●先生や親の言うことは聞けるが、自分で進路を決められない。●失敗を恐れるがゆえに高い目標をたてず、達成可能な位で満足する。与えすぎによる自立心の低下●子どもへのさまざまな対応やサービスの過剰さが自立を疎外。●何もかも与えられ、恵まれた状況故に切迫感が欠如している。キャリア意識の低下●自分の人生の第一歩、将来に関わる重大な選択という意識が低い。●社会(職業)の多様性と自分の可能性に充分気づいていない。●将来、何がしたいかわからない、できれば働きたくないという生徒も。●大学進学さえできれば、という発想。選択肢や価値観の多様化●生徒も親も社会も価値観が多様化し、指導が困難。●進路の多様化により選ぶことが難しくなっている。●大学入試制度と社会変革の過渡期で指導も一貫できない面が。低い自尊心●自己肯定感が低く、周囲の指示に従って行動してきたことで自己決定の力が弱い。●自分に自信がない。自分に興味のない生徒がいる。時間不足、指導力不足●情報や体験を与えてじっくり考えさせる時間の余裕がない。●教員の情報収集力、指導力不足。その他●部活動中心。目先のことに夢中。●地元志向が強すぎる。●家庭の事情、経済面が深刻。■フリーコメント(現状や要因についてのコメントを編集部で抽出)※リクルート進学総研「高校教育改革に関する調査2018」より失敗した経験が人を成長させる。その機会を学校が奪ってはいけないくろせ・なおみ●担当教科は国語科。カリキュラムマネジメント推進委員。教育研究部で授業改善や総合的な探究の時間に向けてのカリキュラム編成を担当。文芸部顧問。「定時制、商業高校、普通科、中高一貫校、総合学科など、多様な学校の勤務経験からお話しできればと思います」広島観音高校(広島・県立)黒瀬直美先生【座談会】なぜ決められない?学校・教師は何ができる?

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る