キャリアガイダンスVol.427 別冊
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2Vol.427 別冊付録 VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った略語(図1)。2010年代に、世界のビジネス界で予測不可能なこれからの時代を表す言葉として使われるようになった。今、私たちはVUCA Worldに生きている。 経営チーム強化コンサルタント、リーダー育成のプロであり、VUCA時代の経営、リーダーシップ、キャリアに関する論客としても知られる株式会社プロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏は、ビジネスの世界の変化を次のように語る。 「VUCA Worldでは、今までのビジネスモデルがすぐに陳腐化してしまいます。過去の成功体験の延長では次の一手が打てなくなっており、 “非連続”の成長が求められているのです」 わかりやすい例が富士フイルムだ。アナログフィルムメーカーだった同社は、デジタルカメラ、化粧品、そして創薬へと、時代の変化に対応して新たな領域に進出し続けてきた。 今までの事業領域がダメになりそうなとき、単に周辺領域に手を広げるだけでは決定的な打開策とはならない。世の中のニーズに応じて、自分たちの強みを生かして、誰も想定できないような領域へと大胆にシフトすることが求められる。 この非連続の成長を実現するリーダーは、VUCA以前の時代のリーダーではないと岡島氏は言う。 「今までのリーダーは、『エベレストに登る』『富士山に登る』という明確な目標を示し、ルートやペースも指示してみんなを引っ張ってきました。しかし、VUCA Worldでは、状況がすぐに変わるので、そもそもどの山を目指せばいいのかがわかりません。そのとき、リーダーが示すのは、方向感であり、世界観。『○○業界でシェアNo.1を目指す』といった到達地点ではなく、規模感や時間軸が不明確ななかでも、『こんな世界が実現できたらいいよね』という納得感のある世界観をステークホルダー、つまり社員や株主や顧客に示し、その方向にみんなを連れて行くことができるリーダーシップが必要ということです」 そうなると事業開発のプロセスも変わってくる。目標に向けて計画を立て、着々と積み上げていく今までのやり方では変化に対応できない。これからは、チャンスがありそうな領域を見つけたら俊敏にプロトタイプ(試作品)を作って顧客に提供し、その声を反映させて修正するという開発手法に変わっていく。 このような開発はピラミッド型・トップダウン型の今までの組織では難しい。つまり、組織のあり方やリーダーのあり方が根本的に変わってくることになる。それを示したのが図2だ。 「これからは、より現場に近い多様な人たちが、お互いをリスペクトしながら、意見をぶつけ合い、切磋琢磨し合う組織であることが求められます。要は全員野球ですね。そこでリーダーに求められるのは、上から指示することではなく、方向感・世界観を示VUCA Worldとは図1取材・文/伊藤敬太郎経済、企業経営、そして個人のキャリアも、今や予測が不可能な時代に入った。このVUCA Worldでは、経験を積んだ優秀なリーダーですら、将来を見通して明確なゴールを指し示すことはできない。誰かに従っていればある程度の正解が得られていた時代は終わった。では、そんなこれからの社会を担っていく若者に求められるものとは何なのだろう。Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字を取った言葉で、予測不能な現代の経済や社会状況を表現するキーワード。 将来を見通すことが困難で、“正解のない”時代

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