キャリアガイダンスVol.427 別冊
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3Vol.427 別冊付録長の時代には課題は既に決まっていて、その解決力が問われていましたが、そこが大きく変わってくる。曖昧で、複雑な世界の中から、自分たちが取り組むべき課題を見つけ出し、設定する力こそが大切になります」 また、「自己効力感」については、「自己肯定感」との対比でこう説明する。 「自己肯定感は過去の自分に対する自信。これももちろん必要なものですが、過去は変えられませんし、VUCA Worldでは、過去への自信があるだけでは足りません。これに対して、自己効力感とは未来に対する自信。やったことがない課題に取り組む際、『自分ならできる!』と、自信をもって立ち向かうことができるかどうか。非連続の成長が求められる世界は、やったことがないことへのチャレンジの連続ですから」 では、高校・大学の段階で、課題設定力や自己効力感を高し、チームのメンバーが伸び伸びと力を発揮できる環境を整備し、信頼し合える組織文化を醸成すること。背後からメンバーを支え、それぞれの強みや個性を生かして、その力を結束させる『羊飼い型リーダーシップ』が必要なのです」 もちろん経営者をはじめ、実際に組織を率いるリーダーだけが変わるわけではない。これからの組織では、個々のメンバーに求められる役割も資質も能力も変わってくる。 岡島氏は「何より求められるのは圧倒的な強み」だと指摘する。VUCA時代の組織では、それぞれ異なる個性や強みをもった多様な人材が結集してイノベーションを起こしていくからだ。弱みが少なく、平均的に能力を備えた金太郎飴的な人材では、イノベーションへの貢献度は低くなってしまう。 そして、これからの組織では、すべての人たちが意思決定に関わっていくため、一人ひとりにリーダーシップが求められるようになる。もはやリーダーシップはポジション上のリーダーだけに求められる力ではないということだ。 図3に示した「新時代のリーダーに求められる10の要件」は、経営者などのリーダーの要件であると同時に、組織を構成する一人ひとりのメンバーにも、段階に応じて習得することが求められるものだと理解してほしい。 岡島氏が、なかでも高校生や大学生に意識して習得してほしい要件として挙げるのが「課題設定力」と「自己効力感」だ。 VUCA Worldで、なぜ「課題設定力」が重要になるのかは、「課題解決力」との対比でとらえるとわかりやすい。 「これからの時代に圧倒的に必要な力の一つが課題設定力です。与えられた課題を早く最適に解決することに関しては、今後、人間はAIに勝てなくなっていきます。VUCA以前の連続成組織とリーダーのあり方も変わる図2出所/株式会社プロノバ作成資料をもとに編集部で構成出所/株式会社プロノバ作成資料をもとに編集部で構成新時代のリーダーに求められる10の要件図3非連続の成長が求められる世界で必要なのは自分で課題を設定する力。そのために、世の中の動きをとらえる先見性や大局観も大切になる。課題設定力、先見性、仮説構築力、大局観VUCA時代には一つの強みだけで成功し続けることは難しい。学ぶ機会を自ら切り拓き、強み(キャリアのタグ)を増やすことが必要に。タグの自己認識、機会開発力岡島氏が経営人材を目利きする際に最も重視しているポイント。必要とあれば自己革新を厭わない素直さなどが、未来への伸びしろになる。素直さ、伸びしろ、学習能力離れた領域を結びつけることによってイノベーションは生まれる。領域を超えて新たな文脈を創り出す力がそのカギを握る。越境力、領域をつなぐ力、違う領域の人脈チームのメンバーに権限委譲をし、各自が自立自走で力を発揮できるようサポートする力。重要なのはティーチングではなく、コーチング。機会提供力、コーチング力、環境整備力時代の変化をとらえ、イノベーションを実現するために必要な力。抵抗勢力を含めて組織内に納得感を醸成するには胆力なども不可欠。変化抽出力、変化適応力、カオス耐性、胆力自分の専門とは異なる領域の物事や、自分とは違う視点からの多様な意見を面白がることができるかどうか。多様性受容力やったことがないことであっても「自分ならできる」という未来の自分に対する自信。修羅場体験を通して身につけられる力。自己効力感多様性のあるチームの力を生かしてイノベーションを起こす「共創のリーダーシップ」を発揮するために必要な力。共感力、熱量、物語力、チャーミングさ不確実な状況のなかで、大きな副作用があるかもしれない事案を意思決定できる力。場数を踏むことによってしか磨くことはできない。意思決定力、実行力、仮説検証スピード逆転のリーダーシップ(リンダ・A・ヒル)カリスマ型羊飼い型顧客リーダーリーダー顧客

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