キャリアガイダンスVol.428
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 HR活動は、年間35単位時間以上、クラス単位やホームルーム単位(※欄外参照)で行うと規定されている。これを踏まえて長田先生は問いかける。「全校や学年集団での取組はHR活動に入りません。HR活動、35時間以上行っていますか? していないと未履修の問題になりますよ(笑)」 冗談めかしながらもこの点を強調するのは、HR活動こそが特別活動の中核となるべきものだからだ。 「クラスの問題を議論するときだけでなく、学校行事で何をやるか決めるときも、生徒会活動の役員や委員を選ぶときも、HR活動の話し合いが土台となります。生徒が自分たちの課題について『合意形成』や『意思決定』を行うときの中心の場となるのがHR活動であり、そうした『生徒が自分で決める』というプロセスを通して、実社会でも生きる資質・能力を育むのが、特別活動の学びの肝なのです」 ではHR活動をどう展開すれば、特別活動だからこそ学びうる知識や思考力や人間性――いわゆる資質・能力の三つの柱を育めるだろう。 年間35時間のうち、学校行事に関連する内容に何時間かは割かれるが、ここをただの行事の準備と捉えると、HR活動は行事の下請けになる。長田先生がポイントにあげるのは、例えば体育祭絡みでHR活動を数時間取るなら、何を目指すのか、行事の成功の先にあるゴールまで見据え、一連の活動の題材を設定することだ(図5参照)。つまり「体育祭のためにHR活動を使う」のでなく、「体育祭という生徒が自分事にしやすい切迫感ある事象を使って、HR活動を行う」のだ。 そしてその題材を念頭に置いて、図6のように合意形成や意思決定を行う授業を展開するのだが、この点は次ページ以降で詳しく触れたい。「生徒が自分で決める」という学習プロセスが特別活動の肝「行事のため」ではなく「行事を使って」HR活動をホームルーム活動を特別活動の中核として考える年間指導計画までまとめたら、次は行事の事前・事後指導を含むHR活動の指導案の作成です。特別活動ではこのHR活動を、補助的な役割ではなく、中核に据えていきます。ホームルーム活動の題材の設定図51.題材2.題材設定の理由集団生活を考えよう希望の進路に向けて「体育祭で優勝しよう」ではなく…「よりよい学習方法を見つけよう」ではなく…内容項目(1)ウ 学校における多様な集団の生活の向上に当てはまる内容項目(3)イ 主体的な学習態度~(3)エ 主体的な進路~に当てはまるHR活動の12内容項目(*)に当てはまる大きな概念に設定するクラス全員に関わること合意形成→自己に関わること意思決定→その目標の先にあるゴールを考える学習指導要領の内容項目と照合する例)なぜその題材にHR活動で取り組むのか、生徒の実態を踏まえて理由を明確にする → その学校やクラスならではの指導のねらい(育みたい資質・能力)が定まる※ホームルームとは「共に生活や学習に取り組む生徒で構成される集団」のこと(学習指導要領解説 特別活動編)。 一般的にはクラスであり、単位制の高校ではホームルームの集まりがこれにあたる。*学習指導要領に記載されたHR活動の12内容項目。8ページ参照。ホームルーム活動の授業の展開図6議題の提案と説明原則生徒が司会クラス全体での話合い活動題材の共有と理解原則教師が促すグループなどでの話合い活動合意形成実践へ(意欲付け)意思決定実践へ(意欲付け)集団活動 *2実践的な活動 ※2合意形成を伴う授業 内容項目(1)*1導入・開始展開まとめ意思決定を伴う授業 内容項目(2・3)*1指導上の留意点切迫感がありクラスの現状に合致切迫感があり自分事として捉える次の活動へのガイダンスも互いのよさや可能性を引き出す。一人での活動ばかりでは特別活動ではない。クラス全体での合意。安易な多数決にならないように。生徒が自分事として捉えることができるか客観的データ(生徒のアンケート等)の提示も有効*1 HR活動の12内容項目のこと。8ページ参照。*2 「集団活動」と「実践的な活動」が特別活動の特質。9ページ参照。142019 JUL. Vol.428

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