キャリアガイダンスVol.428
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えてください。その際、『〜が身に付いている(〜について理解している)』、『〜ができる(〜している)』、『〜しようとしている』という文章に置き換えて考えると目標が立てやすいですよ」と伝えています(9ページ参照)。三つの柱から導こうとすると硬い目標になりがちですが、こうした文章に置き換えて考えると、各校の実態に即しながらも、自動的に三つの柱として整理しやすくなるからです。 そうやって立てた独自の目標に、今度は「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」という、特別活動が長く大事にしてきた三つの視点(図1)が入っているかチェックすることも大切です。具体的には、順に「集団の中で、人間関係を自主的、実践的によりよいものへと形成する視点」、「よりよいHRや学校生活づくりなど、集団や社会に参画しさまざまな問題を主体的に解ように展開することはないのです。 一部の生徒にとっては、事前にねらいや目標を打ち出しすぎると、「それが評価につながるんだな」と打算が働き、楽しいはずの行事のモチベーションが下がる場合もあるでしょう。その点も生徒をよく観察して対応してください。キャリア教育の視点で考えた場合、最初に目標を明示し、そこに向かって轍をつくっていくことも重要ですが、事後の振り返りのなかで「こんな意義があり、こういう力が付いたね」と意味付けをすることもまた、大切なことだと思います。 今回の誌上研修では課題の一つとして「架空の高校における特別活動の全体計画の作成」をしていただきました。生徒像などの条件を提示したうえで、その高校の特別活動で育成を目指す資質・能力を立ててもらうのですが、こうした研修では通常、私は敢えて三つの柱について強調しません。 その代わりに、 「この高校の特別活動で生徒に身に付けさせたい力を考能力が三つの柱として整理されました。特別活動も例外ではありません(8ページ図3参照)。 三つの柱という共通の枠組みのなか、資質・能力ベースで捉えることで、例えば、数学や理科で身に付けた分析力や洞察力が生徒会活動のボランティアに活かされるなど、各教科での学びが実生活とつながっていることを意識しやすくなったと思います。 反対に、HR活動を通して身に付けた合意形成する力が、国語や公民の授業で話合いをする際に活かされるなど、特別活動と各教科等との往還関係も見えやすくなりました。 学校行事も各教科等と結びつきを強めることで、教育効果を高めます。例えば、体育祭で身に付けさせたい力が「他者を慮る力」ならば、それを教科でも身に付けられないか。そうしたことを、例えば教務主任や学年主任を中心に皆で考える。すると、国語で、思いやりについて扱う評論があるとか、公民で共生社会について学ぶ単元があるなど、関連する部分が浮かび上がってきます。それを体育祭のタイミングで「あの授業で培った力が生きるな」と担任が投げかけるだけでも効果的。何も体育祭の直前、無理にそうした授業を事前学習として組み込み、学校行事の「下請け」かの 特別活動は、教育課程に位置付けられた教育活動です。学習指導要領には他の教科同様、目標が示され、内容が規定されています。そこは、今一度確認していただきたいところです。一方で、学習指導要領は大綱的な基準を示したものに過ぎません。学習指導要領の『解説』にしても、「こんなことが考えられる」という表現の通り、これを参考に具体は学校で決めるのです。それより大事なのは、目の前の子どもたちをよく見ること。よいところ、足りないところを把握することで、「この行事ではどんな事をがんばらせたいか」「HR活動では何を話し合わせるべきか」が見えてきます。 大綱的な基準ではありますが、学習指導要領には、先生方の長年の思いや経験も反映されています。ぜひそれらを自校に落とし込んでください。今、取り組まれている特別活動を資質・能力ベースで見直し、少し手を加えるだけで、よりよい教育活動に変わるはず。そうした思いから、以下、学習指導要領やその『解説』を、ひもといていきたいと思います。 今回の学習指導要領では、すべての教科等において、育成を目指す資質・水や空気のような存在であり、「特別ではない活動」が特活。だからこそ本来の意義を見失わずに資質・能力の三つの柱によって教科とのつながりが明確に「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」という三つの視点長田 徹(文部科学省/国立教育政策研究所)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Interview192019 JUL. Vol.428
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